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世界も注目した「即位の礼」「大嘗祭」とはどんな儀式だったのか?

「大正・昭和の大礼」は京都で行われた

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 10月22日、191の国や地域などの代表らが参列し、盛大に行われた「即位礼正殿の儀」(「即位の礼」)は、海外メディアでも大きく取り上げられた。

海外メディアはどう報じたか?

 英国BBCは、「天皇陛下、『即位礼正殿の儀』で国内外に即位を宣言」との見出しで、当日のトップニュースとして報じ、天皇皇后両陛下の装束や「高御座(たかみくら)」の装飾についても、詳しく解説した。米国CNNは、30分近くの生中継で、「簡素な式典は上品で洗練されているように見えます。まさに日本の伝統的な“おもてなし”の心です」と伝えた。

令和の大嘗祭で帳殿へ向かわれる皇后雅子さま ©時事通信社

 仏紙フィガロは、安倍首相が天皇陛下に万歳三唱したシーンに関して、「banzaiは文字通りには1万年を意味し、天皇が末永く生きるよう願うものだ」などと解説。中国や韓国でも生中継され、中国共産党機関紙『環球時報』も、翌日10月23日付の1面で、大きく報じている。

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「世界に現存する最古の皇室制度」(環球時報)、「近代性と世界で最も古い伝統のバランスを取っている」(英国デーリー・メール)というように、伝統ある“ミステリアス”な儀礼が今日にまで引き継がれていることが、海外では驚きをもって受けとめられているようだ。

代替わりは「践祚・即位礼・大嘗祭・改元」から成り立っている

 だが、「代替わり」に関わる儀式は、われわれ多くの日本国民にとっても、同じように“謎”めいたものではなかろうか。

 平成元年に宮内庁に入り、今年3月に退職し――つまりは「平成」をまるまる宮内庁で過ごし――、在職中は主に『昭和天皇実録』に携わった宮内庁の元幹部・梶田明宏氏(現在、昭和天皇記念館副館長)は、次のように解説する。

「実は『代替わり』は、“一日にしてなるもの”ではなく、複数の節目があり、大きく言って、『践祚(せんそ)』『即位礼』『大嘗祭』『改元』から成り立っています。そして歴代天皇の例では、それぞれ時期的にズレがあります。

即位を宣言する天皇陛下 ©共同通信社

『践祚』は聞きなれない方も多いかもしれません。『践祚』と『即位』はどちらも『天皇の位に就く』という意味です。記録によると、古代では『践祚』と『即位』の区別はありませんでしたが、平安初期の桓武天皇の時より天皇の位に就いてから、時を隔てて『即位の礼』を行うことが常例となり、『践祚』と『即位』を区別するようになりました。

 今は『践祚』という言葉は使われません。現行の『皇室典範』には『天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する』と明記され、『践祚』という言葉はないからです。しかし5月に行われた『即位後朝見の儀』は、実質的にかつての『践祚後朝見ノ儀』と考えて差し支えありません。

 明治に関して言うと、明治天皇は、慶応3年(1867)1月に『践祚』し、慶応4年8月27日に『即位礼』を行い、9月8日に明治と『改元』しています」

 つまり、「代替わり」と一口に言っても、複数の節目があり、過去の歴史を見ると、時期的にもズレがあるのだ。