あけましておめでとうございます。未年ですね。
小説の世界で羊と言えば、やっぱり村上春樹『羊をめぐる冒険』(講談社文庫)。昨年『満願』(新潮社)でミステリーランキングを総嘗めにした米澤穂信には『儚い羊たちの祝宴』(新潮文庫)という短編集もある。そうそう、希代の殺人者の人生を描いた伊集院静『羊の目』(文春文庫)は名作。ガツンと来るぞ。
洋モノならトマス・ハリスの『羊たちの沈黙』(新潮文庫)に、フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(ハヤカワ文庫)など、超メジャー級の作品が勢揃い。比喩や象徴ではなくホンモノの羊が探偵役を務めるレオニー・スヴァンの『ひつじ探偵団』(早川書房)はキュートだったなー。
うん、未年だし、羊が出てくる小説を紹介するっていいかも。ナイスアイディアだ。やったね、楽勝! → 早速、羊が出てくる歴史・時代小説を捜そう。→ 本棚を眺める。→ ちょっと考える。→ 再度本棚を眺める。→ 検索する。→ ……。
羊って、日本にいなかったんじゃね?(←イマココ)
何がナイスアイディアかと。何が楽勝かと。私が北川景子なら櫻井翔から「お嬢様はアホでらっしゃいますか?」と言われる場面だ。それは羊じゃなくて執事だ。しかも執事も日本の時代小説には出てこないよ!
と思ったら、いたのである。いや、羊じゃなくて。執事が。鎌倉時代の政所の要職や、室町時代の将軍補佐職を執事と呼んでいたそうで、有名なところでは、高師直(こうのもろなお)が執事だったという。だ、だめだ、高師直が「お帰りなさいませ、塩冶様」とかって言ってる絵が浮かんできたっ! 意味がわからない人は歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』をご覧下さい。