文春オンライン

三浦春馬、上白石萌音も……なぜ日本の美術館音声ガイドは独自の進化をとげたのか

業界最大手に聞いてみた

2019/12/06
note

 三浦春馬に上白石萌音、杉咲花や小泉孝太郎も登場! と聞けば新作の映画かドラマのPRと思ってしまうが、そうじゃない。この秋に開かれている大型美術展で、音声ガイドのナレーターを務めているのがこの面々なのだ。 

 美術館はいまや一大エンターテインメントの場だ。目玉の展示作品を堪能するのはもちろんだけど、その前後に館併設の洒落たレストランやカフェで食事をし、充実したグッズ売場を渉猟、美麗なカタログを手に家路へ……。多彩なお楽しみが揃っている。その欠かせぬメニューのひとつに、音声ガイドがある。各展が人気の俳優や声優を起用し、話される内容は簡潔でタメになり、親密感もたっぷり。声の主のファンならずとも、一聴に値する。 

「ひとつの独立したコンテンツとして成立するよう、長年趣向を凝らしてきました。音声ガイドは会場でしか聴けないもの。その場に行ってこそ楽しめる体験型のエンターテインメントなんです」 

ADVERTISEMENT

アコースティガイド・ジャパン代表・倉田香織さん。背後にはアコースティガイド・ジャパンが音声ガイドを担当した展覧会のポスターが並ぶ

 そう話すのは倉田香織さん。音声ガイドのコンテンツ制作から機器の貸し出しまでを手がけるアコースティガイド・ジャパンの代表を務める。 

 アコースティガイドは日本の音声ガイド界の草分けである。制作する音声ガイドは大型企画展だけで年間50本超。先に挙げた俳優たちが参加した音声ガイドも、すべて同社の制作となる。

 それぞれ三浦春馬は東京都美術館「コートールド美術館展 魅惑の印象派」(12月15日まで)、上白石萌音は横浜美術館「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」(2020年1月13日まで)、杉咲花は上野の森美術館「ゴッホ展」(2020年1月13日まで)、小泉孝太郎はBunkamura ザ・ミュージアム「建国300年 ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン 候爵家の至宝展」(12月26日まで)といった具合だ。 

「音声ガイド自体は世界中の美術館や博物館、観光地などで普及していますが、著名な俳優や声優を起用して、聴いて楽しいものをつくり上げるスタイルは日本独自ですね」 

音声ガイド用機器。透明のボディのものは、箱根・ポーラ美術館でのみ使用されているそう。

 と倉田さんは教えてくれる。そもそもコンテンツとして「聴いておもしろいもの」へと音声ガイドを独自進化させたのは、アコースティガイド・ジャパンだった。 

シニア向けサービスだった音声ガイド

 米国で創業、各国に音声ガイドを広めていたアコースティガイドが日本支社を立ち上げたのは1998年のこと。それ以前から日本の美術館・博物館に音声ガイドは存在したものの、暗がりで小さいキャプションや解説パネルを読むのがつらいシニア層向けサービスの色合いが濃かった。