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「あの事件でスピルバーグは過去の遺物になった」押井守監督が感じた“ハリウッドの破壊者”の限界

「時代は変わることを受け止めなければ、前には進めないだろう」

2019/12/05

 アニメ界のご意見番と言えばこの人! 『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『イノセンス』などの作品で知られる押井守監督に、今年のアニメ界で注目した出来事を振り返っていただいた。

取材・構成=渡辺麻紀

 

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「作り手として“配信”に限界が見えた」

(1)視聴者からの反響が見えづらい見放題月額制

 当初、ネットフリックスやアマゾンプライムなどの配信会社はクリエイターを尊重してくれる上に、資金もあって予算的にも苦労が少ない……そんなふうに聞いていた。私も何本か企画書を出したのだけれど、ことごとく通らなかったし、そうしているうちに状況も変化していったんだよね。

 

 こういう状況は、80~90年代のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)ブームと似ていると思う。最初はオリジナルのストーリーを作らせてくれていたのに、あっという間に人気シリーズのスピンオフなど、鉄板の企画しか通らなくなったんだ。配信もいずれそうなるという危惧があったが、思った以上に早くそうなってしまった。 

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 しかし、一番の問題はそこではない。作品を配信したあと、反響が聞こえてこないことなんだ。これが作り手にとって最も大きな問題になる。映画やテレビの場合は、動員や興収、視聴率などが反響になるけど、配信はそれがほとんどない。配信会社がデータを公表していないせいもあって、数字がわからないんだ。視聴者は全話観たのか、あるいは途中で止めたのか、それもわからない。つまり、彼らが作品と向き合うときに抱くだろう待望感や失望感、それがほとんど伝わってこないんだよ。これが1話ごとに値段が設定されていればまた違うだろうけど、すべて見放題で月額制だから、ますます待望感も失望感も薄れてしまう。

 中には、少なくともお金にはなるからという人がいるかもしれないが、アニメ業界ではお金のためだけに働いている人は少ない。ほとんどの人間が「作品を世に出したい」というモチベーションを持ってやっている。そうじゃないとこんなしんどい仕事、誰もやらないだろう。