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「雑巾みたい」と罵られ……ク・ハラ、ソルリ自殺に見る、韓国芸能界が女性に強いる“矛盾”

イ・ナヨン中央大学教授インタビュー

2019/12/06

「もう、こんなことは起きないでほしい」

 11月、アイドルグループ「f(X)」の元メンバー、ソルリに続いて、ク・ハラの自死が伝えられると、韓国では多くの人から悲痛な声があがった。

病院内に設けられた祭壇にク・ハラさんの写真 ©AFLO

 どんな思いだったのかは本人にしか分からない。しかし、韓国ではその背景を巡り、「ク・ハラを救えなかった私たちの宿題」(ニュース専門テレビ「YTN」)のように、ネットの悪意ある書き込みやそれを傍観していた韓国社会に問題を投げかける声が出ている。

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 社会学、中でも女性学専門のイ・ナヨン中央大学社会学科教授に話を聞いた。

大手ポータルサイトに設けられた“窓”

 ソルリやク・ハラの死後、真っ先に取り沙汰されたのは、ネットへの書き込み問題だ。韓国の大手ポータルサイトでは検索語に上がったトピックについて書き込みができる通称「窓」が設けられており、24時間、絶え間なく書き込みが上がる。ソルリの死後、大手ポータルサイト「Daum」では芸能の書き込み欄が廃止されたが書き込みは止まらない。

「韓国社会ではオンライン文化が暴走しています。

 かつては記事別ではなく、メディアごとに書き込み欄が設けられていましたが、大手ポータルサイトが登場してから(2000年代以降)記事別に書き込み欄が設けられ、さらには、ポータルサイト自体に書き込みができる、“窓”ができました。コミュニティサイトも増え、コミュニティサイトの掲示板にも書き込みが集まります。今や、匿名でどこにでも書き込みができるようになっていて、それに人々が慣れてしまった。

イ・ナヨン中央大学社会学科教授(本人提供)

 他人を品評して『いいね!』がつくことで他人に認められたいという“承認欲求”が満たされ、どんどん刺激的なものを書き込んでしまう。そして、それに共感を覚える人たちが集まり、さらに書き込みがエスカレートする。そんな現象を放置してしまった韓国社会に問題があります」