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連載歴史・時代小説の歩き方

いちにちじゅうやまみち――旧中山道が歴史を変えた?

2015/07/18

genre : エンタメ, 読書

 今回のタイトルは、実際にこう読んじゃったアナウンサーがいたというので有名になった誤読。でも、むしろセンスのある間違いだと思うなあ。中山道の特徴をずばり表した、奇跡のような神がかり的誤読じゃない?

 弥次さん喜多さんが面白おかしく旅をした東海道と違って、中山道はかなりシビアな歴史の転換点に登場する。たとえば古くは徳川秀忠。関ヶ原をめざして中山道を懸命に駆けるも、上田城を攻めあぐねた上に木曽川の増水で足止めを食らい、結局天下分け目の合戦に遅参してしまう。まあ、この頃はまだ道も宿場も整備されてなかったから致し方ない。

 幕末には歴史に名を残す二組の旅人たちが、中山道をそれぞれ東西から出立している。文久元年、将軍家へ降嫁する皇女和宮が京から江戸へ。一年半後、のちに新選組となる面々を含んだ浪士隊が、江戸から京へ。その距離、約500km。宿場の数は69。木曽路はすべて山の中である。

 中山道を通る参勤交代を描いた浅田次郎『一路』(中公文庫)がドラマ化されることでもあるし、和宮と浪士隊はどれくらいかかったのか調べてみた。参考にしたのは有吉佐和子『和宮様御留』(講談社文庫)と、中村彰彦『新選組全史 幕末・京都編』(文春文庫)です。

和宮降嫁…文久元年10月20日[京都・桂御所発]~11月15日[江戸城内清水屋敷着]

『一路』…文久元年12月3日[美濃国・田名部(現・関ヶ原近辺)発]~15日[江戸屋敷着]

浪士隊上洛…文久3年2月8日[江戸・小石川伝通院発]~23日[京・壬生村着]

 中山道は江戸ー彦根の草津までなので、その区間にかかった日数だけでみてみると、浪士隊は15日、『一路』は出発点が関ヶ原な分短くて13日。翻って和宮降嫁は24日もかかっている。遅っ! 和宮様、遅っ!

新選組全史 幕末・京都編 (文春文庫)

中村 彰彦(著)

文藝春秋
2015年5月8日 発売

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