昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

《東大特任准教授ヘイト炎上》「30代アカデミック男性はなぜイキるのか」

2019/12/07

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 社会

〈弊社 Daisy では中国人は採用しません〉
〈中国人のパフォーマンス低いので営利企業じゃ使えないっすね〉

 AI開発などを行う「Daisy」代表で、東京大学大学院情報学環・学際情報学府の特任准教授・大澤昇平氏(31)が自身のTwitterに投稿した内容に、人種差別だという批判が殺到している。24日には東大も「書き込みは大変遺憾」とする見解を発表、28日には対応措置を検討する調査委員会を設置する騒動になっている。

 なぜ若手研究者として活躍している彼はこのような投稿をしたのか。そこから見えてくるものは何か。テレビ・ラジオなど多方面で活躍する文筆家で、『「意識高い系」の研究』(文春新書)の著者、古谷経衡氏(37)が紐解いた。

古谷経衡氏 ©文藝春秋

 東京大学“特任”准教授・大澤昇平の「中国人は採用しない」等のツイッター発言が、「最高学府」東京大学の公式謝罪に至り、大澤の寄付講座のスポンサーが全社降板を発表するなど、事態は拡大の様相を見せている。

 私が所謂「大澤騒動」を俯瞰してみるに、大澤の一連のヘイト発言は典型的なネット右翼そのものである。大澤が30代前半であることを考えると、もはやアラフィフがその主力を占めるネット右翼の中では、かなり若手であるという第一印象を持った。

 今どきの30代前半で、ここまで露骨なヘイト発言を実名と役職を公開して開陳する人物というのも珍しい。ネット右翼界隈での左翼の通称である「パヨク」という言葉を躊躇なく使用するところをみると、“ネット右翼偏差値”は50くらい。つまりどこにでもいる平均的なネット右翼像そのものなのだ。

『AI救国論』(新潮新書)

 ただし、大澤が凡庸なネット右翼と決定的に違うのは、ナルシシズムに満ちた選民意識が見え隠れするところである。自らを「上級国民」と呼称し、自分を批判する者を「下級国民のパヨク」と呼ぶ。このような大澤のナルシシズム・選民意識的差別思想はどこから生まれたのか。

〈異例の飛び級昇進を実現、31歳にして准教授となった〉

 手掛かりになるのは、大澤の唯一の著作、2019年9月に刊行したばかりの『AI救国論』(新潮新書)である。

 本書は、福島高専(高等専門学校)から筑波大学に編入した大澤の「自分自慢」のナルシシズムで全編の約1/3が占められている。さらに大澤は、自身が「最年少の東京大学准教授」であることを何度も書き、なぜに自分がこのような名誉ある地位を手に入れたか、についての自慢が続く。

©iStock.com

〈簡単に自己紹介をしよう。私は東京大学の准教授。(略)その後、学内での熾烈な出世争いを勝ち抜き、大学としては異例の飛び級昇進を実現、31歳にして准教授となった〉(11頁)

〈たとえば、優秀な若手を評価する言葉に「若いのに優秀」という文言がある(私もこれまで何度も言われてきた)〉(19頁)

 大澤は本文中で、おそらく意図的に「特任准教授」という自らの正式な役職を「准教授」と置き換えて使用している(ただし批判を恐れてか、ごく一部「特任准教授」という正式名称が登場する)。「東京大学准教授」と「東京大学特任准教授」では、ソ連軍のT-34とイタリア軍の豆戦車ぐらい意味合いが違うが、大澤はおそらく意図的に自分が「東大准教授」であることを繰り返して、権威付けに利用している。