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2019/12/11

公募から生まれた作品『Free!』

『響け!ユーフォニアム』シリーズ(2015年~、石原立也監督)は、こうした路線のひとつの集大成ともいえる作品だ。原作は吹奏楽部を扱った武田綾乃の同名小説。北宇治高校吹奏楽部に入った黄前久美子を主人公に、吹奏楽に打ち込む高校生たちの群像を描いている。キャラクターの繊細な心理表現、金管楽器や木管楽器の精緻な再現、そしてごまかすことなく描かれる演奏シーンと見どころは多い。これまでTVシリーズが2作、劇場版が1作作られており今後も継続予定。TVシリーズ第1作第12話「わたしのユーフォニアム」では先述の木上が絵コンテ・演出で腕を振るっている。また、サブキャラクターに焦点をあてた映画『リズと青い鳥』(2018年、山田尚子監督)も高い評価を得た。

『響け!ユーフォニアム』販売元:ポニーキャニオン(左) 『リズと青い鳥』販売元:ポニーキャニオン(右)

 また京都アニメーションは、2009年から「京都アニメーション大賞」の公募を始め、KAエスマ文庫というブランドでライトノベルの展開も始めた。これは自社が原作権を持つ作品を制作していくためだと思われる。KAエスマ文庫からは『中二病でも恋がしたい!』『境界の彼方』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』などが映像化されている。

 そこから生まれた大ヒットが『Free!』(2013年、内海紘子監督)だ。おおじこうじの小説『ハイ☆スピード!』を原案にした本作は、七瀬 遙をはじめとする高校生の男子水泳部員たちの群像を描く。登場人物たちの細マッチョな肉体美と、なかなか描かれることのないリアルな競泳シーンに京都アニメーションの技が遺憾なく発揮されている。「女性ファンは“狙っている”と思われると逆に冷める」といわれるが、本作はがっちりと女性ファンのハートを捕まえて、現在もシリーズ継続中だ。

『Free!』販売元:ポニーキャニオン

 日本のアニメはいかに登場人物に実在感を与えるかを工夫することで進化してきた。京都アニメーションは間違いなくその進化の最先端に位置する制作スタジオなのだ。

藤津亮太(ふじつ・りょうた)
アニメ評論家。1968年静岡県生まれ。新聞記者、週刊誌編集者を経て、評論家活動に。著書に『アニメ「評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ:ゼロ年代アニメ時評』(NTT出版)など。今年、『ぼくらがアニメを見る理由―2010年代アニメ時評』(フィルムアート社)が発売された。東京工芸大学非常勤講師。

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