文春オンライン

それでも、山中伸弥さんの「iPS細胞」への研究は支援されるべき理由

問題は「iPSへの助成偏重」ではなく「助成額の絶対的不足」と「研究支援の仕組みの悪さ」

2019/12/13

 ノーベル化学賞を受賞した旭化成名誉フェロー の吉野彰さんが、ストックホルムで華やかな授賞式に参列して大変湧き立っておりました。非常に栄誉なことで、見ているこちらも幸せな気分になりました。

いろんな問題を早期発見早期処理してきた菅さんが

 その一方、日本国内では我らが週刊文春が首相補佐官・和泉洋人さんと、厚生労働省大臣官房審議官の大坪寛子さんとの派手な不倫スキャンダルを報じ、それはそれは騒ぎになっています。和泉さんと言えば、国土交通省でのある事件をめぐるミスを救ってもらった恩義から現官房長官の菅義偉さんに絶対的な忠誠を示す懐刀であり、一方の大坪さんと言えば、まあいろいろあったらしいけど慈恵医大の勤務医から厚労省へ医官として転身し、目下盛大な勢いで立身出世中の女性官僚です。

 どちらも超長期政権となった安倍晋三総理率いる内閣を文字通り支えている人材であって、お前らほんと何しとんねんと言いたくなるような素敵な大型スキャンダルに発展してしまいました。官房長官としてクソ真面目にいろんな問題を早期発見早期処理してきた菅さんが、まさか自分の小脇に差している刀がアカンことになっていたとは気づいていなかったようであります。

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 んで、その大坪さんがやらかしていたのは、iPS細胞の発見などで多大な科学的業績を打ち立てノーベル賞を受賞した山中伸弥先生率いるiPS細胞研究所の重要な事業の一つ、細胞備蓄事業の補助金年間約10億円を打ち切る、という恫喝騒ぎであります。まさか和泉さんと京都まで行った大坪さんが、山中先生を恫喝したついでに不倫ランデブーしていたとかいうナイス事案であったとは文春記事を読んでいる私の目頭が熱くなるわけですけれども、いやー、何度も書きますけれどもお前らほんと何しとんねんと思う気持ちでいっぱいです。

京都大学iPS細胞研究所長・山中伸弥氏 ©️文藝春秋

 そんな官邸サイドからの山中さんDISに呼応する形で、先日、NewsPicksに「【ドキュメント】日本のiPS細胞は、なぜガラパゴス化したのか?」という記事が掲載されました。詳細を引用するのは控えますが、なぜか「(山中さんが推進する)iPSバンクだけでも2018年度までの6年間で、少なくとも94.7億円が使われている」ものの成果が見られないので打ち切りますよ、という話になっています。

 いやあ、大坪さんの不倫&恫喝記事を読んだ後で一連のNewsPicksの告発記事を読むと、お前らどういう意図でそういう論陣を張ったんですかねえとお伺いしてみたい気持ちでいっぱいになるのですが、議論としては分かります。

製薬業界全体で概ね8兆7,560億円

 まあ……製薬系も基礎研究もそうですが、年間10億ちょっとの研究費というのは正直「はした金」であります。薬作るの、超カネかかるんですよね。アメリカの製薬業界の最新レポートを見てみますと、人体での治験の前に行うマウスでの試験「Pre-human/Pre-clinical」から、最終的な承認までのプロセスに必要な金額は製薬業界全体で概ね8兆7,560億円ほど(2018年、1ドル110円換算)と試算されています。

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