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「作る側がどれだけマンネリに耐えられるか」“紅白歌合戦”で9年間白組司会を務めたアナウンサーの提言

#1『私の「紅白歌合戦」物語』「“紅白”よどこにいく」より

2019/12/17
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 9年連続で“紅白歌合戦”の白組司会を務めた元アナウンサーの山川静夫さん。当時の舞台裏と、とっておきの話をまとめた『私の「紅白歌合戦」物語』が発売されました。令和元年の暮れ、70回目を迎える紅白歌合戦への提言を再構成の上、公開します。

山川静夫さん ©️文藝春秋

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 現在の歌謡曲は、たしかに「音楽性」は高まったものの、旧来の日本人の感覚からいえば、「ことば」があまりにもないがしろにされている。1小節の音符の中に、無理矢理、まったく意味不明に聞こえることばを、いくら詰めこんでも効果はない。

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©iStock.com

 こんなことを口を酸っぱくして言っても、今日(こんにち)の時流には逆らえない。演歌の大御所、北島三郎さんは平成25年の「紅白」を最後に身を引いた。新聞紙上(朝日新聞平成30年1月10日)で北島さんの発言を読んだ。

「世界が身近になり、みんな視線は日本の外を向いている。若い子はリズム感が良いし歌もうまい。今の音楽は踊って楽しめること、雰囲気を楽しむことを重視している。それは時代の流れで、もちろん悪いことではない。でも今の音楽だって、元をたどれば流行歌に行き着くんじゃないかな。つらい思いをしている人々に寄り添える「生活の歌」を歌う大事さを、若い人には忘れずにいてほしい」

 北島三郎さんの、時局をふまえた温かいことばの重さを感じる。なるほど、そうだ。