昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載近田春夫の考えるヒット

ももクロが見せつける、新人アイドルとは違う集中力と余裕――近田春夫の考えるヒット

2019/12/19

『stay gold』(ももいろクローバーZ)/『私を創るのは私』(アンジュルム)

絵=安斎 肇

 商業音楽/流行歌を聴こうとするとき、常に興味のいくポイントのひとつはテンポだ。

 今様女の子のアイドルのシングルの全てとまではいわないが、一種“かなりアップテンポの曲調”は定番となった。

 今週編集から送られてきた二枚(ももいろクローバーZにアンジュルム)も、まさにそういったカテゴリーに属するものといっていいだろう。

 ところで、何故アイドルの世界では曲速度の速いアレンジが好まれるのか?

 いうまでもない。ライブに於いて、聴き手の心拍数を上げる、いい換えるならば煽るのに便利/都合がいいからだ。うまく煽ることが出来れば、観客の集団はいとも簡単に興奮状態におちいってくれる。

stay gold/ももいろクローバーZ(KING)2008年に結成して昨年10周年。何人かの卒業者は出してきたが、スタートメンバーで活動を続ける。

 というのも、先日アイドル関係のイベントに審査員で呼ばれたことは書いたかと思う。そこで目の当たりにしたのが、述べてきたような“アゲアゲ系”なイントロが鳴り出すや否や、スイッチが入ったかの如くと申せばよろしいか、会場を埋め尽くした、社会人と思しき数百の成人男子たちのテンションが、もう条件反射レベル!で一気にクライマックスまで登りつめていっちゃう(笑)という“ものすごい光景”だったのだ。咄嗟に思い出したのが「パブロフの犬」だった(ま、俺も梅干を見ればすぐ唾が湧いてきちゃうたちなので、人のことはいえないですけどね)が、それはともかく、実感したのは、一定数のヒトが“我を忘れるための起爆剤”として、アイドル及びその楽曲を、真剣に必要としていることなのだった。ついでにもうひとついえば、自分に興味のない世界は、時としては異様にも映るということで、先般は本当に「いいものを拝見させてもらった」と思っている。感謝。

 その際に司会を務めていたのが、ももクロと恵比寿中学の二人だった。舞台に上った他の――ほぼ無名といってもいい――新人たちとは、人気者としては格も相当に違うとは思うのだが、観客の二人への反応は、アイドルに対するものでは決してなく、普通に、司会のお姉さんに対する温度であった。いわゆる“ワーキャー度”はゼロだったのだ。

 アイドルにせよスターにせよ、それは本人の生来の資質ではない。あくまで“状況”が作るものなのだということも、その日リアルに体感出来た次第なのだが、それはそれ。

 今回の新譜の動画などを見るにつけ、表芸ともなるとさすが“ももクロ”だといわざるを得ないものはたしかにある。動きのキレの良さ、表情の堂にいった落ち着きぶりなどなど、新人たちとはやはり明らかに別物の集中力を見せつけているのだ。なるほどね。誰よりもそれを知っているからこその余裕の態度があの日の“司会のお姉さんモード”ってことだったのね。納得。

私を創るのは私/アンジュルム(UP-FRONT)結成して今年で10年。最後のスタートメンバーも今年卒業し、新展開を図る。

 冒頭、ももクロもアンジュルムもいっしょくたみたいな書き方をしてしまったが、サウンド自体は全く違う。ただ、そんなことに果たして意味を求めるリスナーがいるのかどうか? どうなんざんしょね。

今週のわが町愛「いまオレの住んでいる横浜がカジノ計画で揉めているのは知ってる? いまの林文子市長って、2年前の選挙でカジノ反対層の勢いを見て“白紙です~”といいつつ、再選されたとたんに“カジノ! カジノ!”と計画を押し通そうとしていて、オレの性分的に許せないんだよね」と近田春夫氏。「腐ったことやっていると、日本のためにも悪いよ」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

この記事の写真(3枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー