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2020/01/24

 高野連の処置は全く政治的決定ではない。選手の安全を配慮したものなのは明らかだ。また試合をするユニフォームから日の丸を外したのでもない。戦後最悪と言われる日韓関係の中で、日の丸をつけて戦うのはグラウンドの中だけでいいということだ。ましてやスポーツとは戦う相手がいて初めて成り立つもので、だからこそ相手に対するリスペクトは不可欠である。そういう背景の中での“日の丸外し”だった訳である。

スポーツを“政治利用”するムード

 ところがそこで政治的な思惑や話題性に飛びついてすぐに口を挟む自称・右派の浅ましさ。選手の身を案じるより、勇ましさや日の丸の責任を押し付ける人びとにはスポーツを語る資格は一切ない。

 東京五輪を控える中で、我々がもう一度、戒めなければならないのはこうしたスポーツに政治的なナショナリズムを持ち込もうとする論調であり、それを政治的に利用しようとする政治勢力である。特に気をつけなければならないのが、五輪のメダルとナショナリズムをリンクさせることで、スポーツを政治的に国威発揚の場に利用しようというムードではないだろうか。

 オリンピックの歴史の中でスポーツと政治的ナショナリズムを連結したことで、最悪の見本と言われるのが1936年のベルリン大会である。

1936年ベルリンオリンピック ©文藝春秋

 別名「ナチ・オリンピック」とも呼ばれるこの大会では、33年に政権をとったアドルフ・ヒトラーが国威発揚とのちのユダヤ人虐殺につながる「アーリア人の民族優勢」を示す大会として位置づけ、メダル獲得に国家的事業として取り組んだ。その結果、ドイツは89個のメダルを獲得し、2位のアメリカの56個を抑えて圧倒的な勝利を収めている。この大会の模様はレニ・リーフェンシュタール監督の指揮で「民族の祭典」と「美の祭典」として映像化され、ナチスドイツのプロパガンダとして国内外に大きな成果を収めることとなったが、その後の歴史的な惨劇は説明の必要もないはずだ。