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2020/01/24

 アスリートたちの心にはもちろん勝利への強い思いがあり、その先にメダルというものがある。そして自分自身のためだけではなく家族や友人、そして生まれ故郷や国への思いが、勝利へのモチベーションとなるケースもある。ただそれはあくまで選手個々が心に秘めて戦うもので、その思いを安易に国のためと求めたり、政治的に利用すべきではないということだ。

「金メダル候補で日本が本当に期待している選手だからガッカリしている」

 2月に競泳の池江璃花子選手が白血病であることを発表した際に、当時の桜田義孝五輪相が語った言葉だ。

「がっかり発言」で批判を浴びた桜田義孝五輪相(当時) ©JMPA

「オリンピックの神様が池江璃花子の体を使って『オリンピックとパラリンピックをもっと大きな視点で考えなさい』といってきたのかな」

 直後の講演でこう語った橋本聖子現五輪大臣は、スポーツ界で問題になっていたパワハラ問題やガバナンスの問題にリンクさせてこうも語っている。

「そんなことで悩んでいる場合ではない。もっと前向きにやりなさいよ、と池江璃花子を使って叱咤激励してくれているのではないかとまで思った」

「日の丸はスタンドにあろうとなかろうとあまり関係ない」の真意

 これらの軽率な発言には当然、多くの批判が集まった。ただ何より怖いのはオリンピックに関わる政府の中心的人物の間にも、政治とスポーツを切り離すという意識が欠如していることである。

「結局は自分の中に思いがあれば、それはスタンドにあろうとなかろうとあまり関係はないと思います」

 2006年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック直後にマリナーズ時代のイチローを取材した時の言葉だった。イチローもこの大会での日の丸の重みを熱く語っていたが、その一方で日の丸のフラッグが戦う上での力となったか、という質問にはこんな風に答えていた。

 スポーツは自称・右派の人々が唱えるような、国威発揚の道具では決してないし、そうであってはならないはずだ。日の丸はポロシャツの袖になくても、選手の心の中にあればいいものなのである。

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