文春オンライン

「サラリーマン」を馬鹿にして駄目な知識を吹き込む、オンラインサロンとかいう魔境――2019 BEST5

もっともらしいことを教典にする新興宗教をやっとるだけなんですよ

2020/01/03
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2019年(1月~11月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ネット事件部門の第4位は、こちら!(初公開日 2019年6月14日)。

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 頑張っても報われない仕事ってあるじゃないですか。

 例えば、先日阪急電鉄の広告が炎上してましたけど、現実離れしていて、みんなの実感がないフレーズってほんと軽やかに燃え上がるんですよね。

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「月50万円で生きがいない生活か、30万円で仕事が楽しい生活か」 物議醸した阪急電鉄の広告が中止に
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1906/10/news130.html

働き甲斐とはやや無縁だけれども……

 で、その阪急も含めてインフラ系の事業者というのは、頑張ってどうこうという仕事ではなく、決まったことを決まった通りしっかりやることが求められているわけです。電車の運転手にしても「僕は頑張って運転して、この区間は3分時間を縮めました!」みたいな努力は求められていないという。いや、そういう努力はしなくていいから。

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 私たちが暮らしている社会を支える仕事というのはいろんな種類があります。働き甲斐がなければ死んじゃうようなクリエイティブな仕事をしていて、他の会社と猛烈な競争をしながらアイデアを出し続けて頑張っている人もいます。一方、電車を運行したり電気やガスを安定供給したり清掃したりといった働き甲斐とはやや無縁だけれども取り組む価値のある大事な仕事も沢山あります。

「やりたい仕事をやれ」と国民全員に言ったら、好きでやっているわけではないゴミ収集とか、危険な鉄柱に登る仕事とか、ドモホルンリンクルが一滴一滴落ちてくるのを眺めている仕事とかはなり手がいなくなってしまうわけですよ。

オシャレ男女がキャッキャウフフして働く光景だけじゃない

 煽っていいことと悪いことってあると思うんですよね。

 なのに「これからは『働き方改革』だ」と政府がいい、勢いのあるベンチャー界隈では綺麗なオフィスでオシャレな男女がキャッキャウフフしながらフレックスで働いている光景が喧伝されます。メディアで持て囃されるのは、そういうキラキラした人たちばかりなんですよねえ。でも、実際にほとんどの国民は満員電車に揺られ泥臭い仕事をして上司に怒られ部下を罵りながら月々の給料をもらい、わずかな小遣いで週末をテレビ観ながらのんびり暮らすだけという生活を送っているのかもしれません。

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 やりたいことをやれって言われたら、そりゃみんな高給の取れる仕事をやりたいし、俳優や政治家など才能で選ばれる仕事をしたいって希望を持つのは当然です。でも、そういうやりたい仕事は競争が厳しく、なれる人が少ないからこそ、みんなある程度妥協して勤め人をやり、好きでもない仕事だけどやっているうちに存在意義を感じたりやり甲斐をもったりして、人生を立派に歩んでいくのです。