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2020/01/04

不正のターゲットは「年収が低めの若者」

 目的を偽ってローンを借りるのは融資契約に反するため、不正がバレた利用者は一括返済を迫られる。物件を強制処分させられ、残債を分割ででも払わされるのが一般的だが、不正利用者には年収が低めの若者が多いだけに、自己破産手続きに移る人も相次いでいる。

 ただ、機構が特定した計162件の不正事例は、都内の一部の業者が関わるものだけで、氷山の一角だ。筆者が確認できただけでも、住宅ローンの不正利用を勧める業者グループは少なくとも5つある。冒頭の飲食店店長も、まだ機構の調査を受けていない。

 しかも、不正利用はフラット35にとどまらない。確認できた範囲では、みずほ銀行や楽天銀行、中央労働金庫、そのほか多くの地方銀行でも、同様の不正事例がある。すべて明るみにでれば、事例は何十倍、何百倍にも膨らむはずだ。

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新築シェアハウスを建て割高の価格で売りさばく

 2013年からの日本銀行の異次元緩和をきっかけに、金融機関は必死でお金を貸し出し始めた。金利が下がる分、同じ返済額でも多額のローンを組ませることができる。融資件数を伸ばすため、審査は甘くなり、不動産価格への評価もいい加減になりがちだ。倍の値段をつけた冒頭の物件はいい例だろう。

 2018年にはスルガ銀行による不正融資事件が発覚した。新築シェアハウスを建てては割高な価格で売りまくり、破格の家賃収入を約束した業者は破綻。億単位の融資を受けた数百人規模のサラリーマンが路頭に迷う事態となった。

 不動産業者は客の貯蓄額を示す預金通帳、収入を示す源泉徴収票など、ありとあらゆる審査資料を偽造しまくった。中古マンションの空室の窓にカーテンをかけ、賃貸契約書を捏造して高利回りを装う例もあった。

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 そうした不正に多くの行員も関与していたスルガ銀行は、金融庁から不動産投資向け融資の業務停止命令などを受けた。審査がずさんで、業者の不正を見抜けなかった実情は、ほかの銀行も大差はなかった。金融庁の監視や指導が厳しくなったことも受け、スルガ銀行の事件を機に、多くの銀行が審査を厳しくした。