昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載歴史・時代小説の歩き方

2014/10/18

 柿は干したり焼いたり挟んだり

 柿の和菓子が登場する時代小説は多い。前述の『まるまるの毬』では干し柿をあるものの隠し味に使うし、宮部みゆき『初ものがたり』(PHP文芸文庫)では柿羊羹が出される。高田郁の〈みをつくし料理帖〉シリーズ(ハルキ文庫)では、『想い雲』で焼き柿にしたり、『夏天の虹』で干し柿を刻んだものと胡桃を白和えにしたりと大活躍。

<完本>初ものがたり (PHP文芸文庫)

宮部 みゆき(著)

PHP研究所
2013年7月17日 発売

購入する

 田牧大和『甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺』(文藝春秋)は、菓子職人の兄と商才に長けた弟が組んで菓子屋を繁盛させる物語だ。ワケありの叔父がやたらとふたりの邪魔をするのを、知恵と工夫と駆け引きで乗り切る兄弟が爽快。この店の人気商品が「柿入りういろう餅」である。

甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺

田牧 大和(著)

文藝春秋
2013年10月30日 発売

購入する

 ういろうの間に吊るし柿の柔らかなところを敷き詰めてサンドイッチ状にしたもので、積もりたての雪のような白と鮮やかな橙色の層が「可愛らしい」という。ああ美味そうだ……。このういろう餅を見た子供たちの描写が秀逸。わくわく感を抑えきれない。早く食べたくてうずうずしている。でも食べきるのがもったいなくていつまでも見つめている。これよこれ。お菓子ってこういうものだよね。

 和菓子は季節や行事の訪れを教えてくれる食べ物だ。月見団子しかり桜餅しかり。和菓子ものの時代小説は、四季がなくなったと言われる現代に「この季節が来た!」という楽しみを思い出させてくれるのである。もしまだ美濃の栗きんとんを食べたことがないなら、この秋にぜひご賞味下さい。びっクリするよ!(斬新な会心のダジャレで締めくくる)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー
z