11月15日は坂本龍馬の命日だ――とか書こうもんなら「いやそれ旧暦だから」って指摘が近江屋が埋まるほど来るだろうが、気にしない。だって11月15日だからこそ「誕生日が命日」っていうドラマチックな展開になるわけですよ。新暦だと誕生日は1月3日で命日は12月10日で、何のネタにもなりゃしない。それにほら、12月に入ると時代小説的にはやっぱり忠臣蔵だからね。今月のうちに龍馬は済ませとかないとね。
というわけで近江屋事件である。慶応3年11月15日。司馬遼太郎『竜馬がゆく』8巻(文春文庫)によれば、このときの龍馬の格好ってのがアンタ、「まわたの胴着に舶来綿の綿入れを着かさね、さらにそのうえに黒羽二重の羽織をひっかけて」だそうで、風邪をひいていたとは言え、どんだけ寒かったんだと。綿 ON 綿。ほぼ布団。そこを襲われたわけで、布団がふっとn……なんてダジャレは口が裂けても言わないぞ。言わないってば。
中岡慎太郎と時勢を論じた後、龍馬は峰吉少年に、軍鶏を買って来い、と告げる。「峰吉は、四条小橋の『鳥新』へ走って、軍鶏を注文した。ここで三十分待たされた。/その間、運命が進行している」と『竜馬がゆく』にはある。進行した運命とはもちろん暗殺であり、佐々木只三郎をはじめとする見廻り組が近江屋へ入り、龍馬と中岡を斬殺した場面に続く。
『竜馬がゆく』は龍馬が絶命した場面で終わっている。なのでここからは黒鉄ヒロシの歴画『坂本龍馬』(PHP文庫)によるが、軍鶏を買って来た峰吉は現場を見て慌てて裸馬に乗り、陸援隊に急を知らせた――。と、ここで私はかねてより疑問に思っていることがある。