北海道に旅行した友人から、ラベンダーのアロマオイルをもらった。実にいい香りなんだが、やっぱ、あれだよね、ラベンダーつったらどうしても「これを嗅いで、タイムスリップしちゃったらどうしよう」って思うよね。思いませんかそうですか。
タイムスリップ小説はもはや一大ジャンルになっているのだけれど、これは歴史・時代小説のコラムなので、今回は〈現代人が過去の歴史的事件の現場にタイムスリップする〉という話をいくつか紹介しよう。
あ、ガチの歴史小説好きの人には、もしかしたら若干の邪道感があるかな? でもこれがなかなか侮れないのだ。大きなメリットがふたつある。ひとつは、現代人の語りなので言葉がわかりやすく、普段歴史モノに馴染みのない読者でもすんなり入っていけるという点。もうひとつは、歴史上の出来事を現代の知識や技術で再解釈できるという点。
たとえば柴田よしき『小袖日記』(文春文庫)は、不倫の恋に破れてヤケになっていたOLの頭上で突然何かがスパーク、気がつくと平安時代(のような場所)のある女性の中に、彼女の意識が入り込んでいたという設定。その女性とは、紫式部のおそば付き女官で、「源氏物語」の元ネタを集めていた小袖だ。
読みどころは何といっても、源氏物語のエピソードを現代視点で絵解きするところ。夕顔変死事件の真相、末摘花の鼻が赤い理由、葵の上の死因などなどを、現代の目で見たらまったく違った真相が浮かび上がる。確かに、それ生霊の呪いじゃないよれっきとした犯罪もしくは病気だよ、と膝を打つ場面多数。その謎解きは本格推理の醍醐味もあって実に面白い。