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連載歴史・時代小説の歩き方

2016/09/03

genre : エンタメ, 読書

歴史を現代人の目で見る意味

 同時に、主人公が見た平安時代の様子も興味深いぞ。貴人の女性は人前で立って歩かず膝で這いずるとか、女性はみんなおかめだけど、美人おかめとそうじゃないおかめ(何が違うんだそれ)が見分けられるようになったとか、ポップなOL言葉でどんどんツッコんでいく。はるか遠い平安の暮らしを、現代人が語ることで一気に身近にしてくれるのだ。

 そうして身近に感じさせておいたところで、柴田よしきはシビアな問題を読者にぶつけてくる。「源氏物語」を読んで、光源氏の勝手すぎる振る舞いや、女を譲ったり捨てたりを武勇伝のように語る男たちに腹を立てたことはないだろうか? 不倫の恋で裏切られた主人公は怒り、泣く。「千年経ったって、二千年経ったって、なんにも変わらへん!/男にとって、女は人ではなく、物、なのだ」

 現代と同じ問題を歴史の中に見つけ、それと戦う当時の人々を現代人の目で描写することで、「じゃあ今の自分たちはどうなのか」を考えさせるのがタイムスリップもののひとつの醍醐味と言っていい。

 その一方で、タイムスリップした主人公が歴史の中で自らの役割を見出すケースもある。そのタイプで私が個人的にいちばん好きなのが、浅倉卓弥『君の名残を』(宝島文庫)。これは高校生3人が源平合戦の時代に飛ばされる話なのだが、彼らは過去で実在した人物として生きて行くことになる。それが誰かは内緒。すごく言いたいけど内緒。判明した瞬間すべてがバチバチバチっと繋がって「そういうことかあ!」とのけぞるぞ。

 なお、安澄加奈『はるか遠く、彼方の君へ』(ポプラ社)も源平時代に3人の高校生が飛ぶというまったく同じ設定なのだが、こちらは現代人スタンスをキープしており、アプローチがまったく違う青春小説仕様なので読み比べ推奨。あなたのお好みはどっちかな?

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