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2020/02/01

「自分は正しい」あおり加害者の思考

 常磐道の加害者は、「被害者の車に進行を妨害されたと感じ、頭にきて追いかけた」「相手の運転が間違っているから、正さなくてはならないと感じた」と供述しています。別の事件では「尾張小牧ナンバーの車線変更は許せない」という理不尽な供述をしたドライバーもいましたが、マイルールを守らない奴を懲らしめるのは、彼らにとって“正しい”ことなのです。

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 この正義感に基づく制裁行動は、脳内でドーパミンという神経伝達物質を分泌させます。ドーパミンは「自分は正しいことをしている」との充足感を与え、脳に快感をもたらします。すると、ますます相手を攻撃する気持ちが強まって、怒りの感情が持続してしまうのです。アンガーマネジメント講習では、6秒ほど深呼吸すれば怒りの感情が鎮まると教えますが、ドーパミンが作用していると、深呼吸の効果も限定的になるでしょう。それは「正しい自分」に陶酔している状態だからです。

 さらに、常磐道の事件では、一緒に逮捕された同乗女性というファクターも大きく作用したと考えられます。彼女が、「そんなみっともないこと止めてよ」と加害ドライバーに強く歯止めをかけられる存在であればよかったのですが、逆に理性のブレーキを外す役割を果たしていたようです。同乗女性は車を降りて、被害男性が殴られる一部始終をガラケーで撮影していました。好きな女性が隣にいれば、加害男性には自分を強く大きく見せようとする心理が働きます。

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 いじめや幼児虐待でよく見られるのですが、グループ・ポラライゼーション(集団の極性化)という現象があります。集団でいじめをしているとき、仲間から「お前、ちょっとヌルくね?」などとけしかけられて、暴行がどんどんエスカレートするようなケースです。集団内だと相互に監視している状態なので、単独でいるときよりも、凶暴性を増す方向にベクトルが傾いてしまうのです。

あおり運転への対処法

 では、キレてあおり運転をしてくる相手には、どのように対処したらよいのでしょうか。

 まずは、話が通じる相手だと考えてはいけません。たとえるなら、猛獣のライオンかヒグマです。彼らは攻撃を完遂するまで満足しません。すぐにドアをロックして、警察に通報してください。怒りに支配されている相手に対しては、逃げるしかありません。

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 あおり運転に遭遇する危険は、常にどこにでも潜んでいます。そのつもりで自衛するより他ないのです。

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