昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

韓国人には珍しい自己批判の本――鄭大均が語る「反日種族主義」

「反日種族主義」大論争#4

2019/12/31

 竹島、徴用工や慰安婦問題など韓国で通説となっている歴史認識を検証した『反日種族主義』。今夏刊行された韓国では曺国前法相が批判するなど物議を醸し11万部超、11月発売の日本版は36万部に。日韓で賛否両論、波紋を呼ぶ本書を識者が論じる。

◆◆◆

鄭大均氏(首都大学東京名誉教授)

 この本は韓国の古い性格、原初的性格を教えてくれます。そもそも李栄薫氏は「民族主義」ではなく「種族主義」と表現する。それは韓国人の内面を構成する持続的なメンタリティーのようなもので、シャーマニズムや血縁主義、韓国人に特有な自然観に結びついているという。

 なぜ韓国は中国には従順なのに、日本には敵意をむき出しにするのか。李栄薫氏はそれを「種族主義」という民族性や国民性との関係で説明するわけです。

韓国版(左)日本版は文藝春秋刊(右)

 隣国のこの古さですが、日本人が気づいていなかったわけではない。今から100年前に朝鮮を訪れた谷崎潤一郎は「朝鮮雑感」(1918年)という随筆で、平安朝を主題にした物語に関心がある者は絵巻物を見るより、京城(現在のソウル)や平壌を歩いてみるのがよいと書いています。当時の朝鮮には今はなき日本の伝統や風景が残っているのだという視点です。

 日本統治期だった当時、韓国(朝鮮)の古さはむしろステレオタイプのように語られていた。ところが、戦後日本ではその古さや停滞性を語ることがタブーになった。日本が韓国と国交正常化したのは1965年ですが、以後の韓国がめまぐるしく変化する国になり、古さが見えにくくなったという事情もあるでしょう。