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広河隆一氏の「性暴力」を認定 性行為要求、ヌード撮影……7人の女性による核心証言

広河隆一氏の「性暴力」を認定 性行為要求、ヌード撮影……7人の女性による核心証言

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「週刊文春」に掲載されたライター・田村栄治氏の記事により明るみに出たフォトジャーナリスト・広河隆一氏のセクハラ、パワハラ問題。12月27日、検証委員会の報告書が自身が発行人を務めていた「DAYS JAPAN」のウェブサイトで公開された。報告書は、広河氏による性被害やセクハラ、パワハラが多数あったことを認定。検証委員会に寄せられた証言に基づき、報告書にまとめられたセクハラ被害(2004-2017年)は以下の通り。

・性交の強要 3人
・性交には至らない性的身体的接触 2人
・裸の写真の撮影 4人
・言葉によるセクシャルハラスメント(性的関係に誘われる等)7人
・環境型セクシャルハラスメント(AVを社員が見える場所に置く)1人

 また、報告書では広河氏のパワハラ行為についても分析している。

 広河氏の実像を報じた「週刊文春」2019年1月3日・10日号に掲載された記事を再編集の上、公開する。なお、記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のまま。

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「写真を教えてあげる」「アシスタントにしてもいい」。尊敬する先達から声をかけられ、報道の仕事を志す若い女性たちは歓喜した。だがその先には、性暴力ともいえる人権侵害が待ち受けていた。被害女性たちがフォトジャーナリスト・広河隆一氏の実像を証言する。(文・田村栄治)

フォトジャーナリスト広河隆一氏

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 コートやダウンをまとった人々が行き交う、東京・新宿の京王プラザホテル。

 杏子さん(当時20歳。以下、被害女性は全て仮名)が指定された部屋の前で呼び鈴を押すと、中にいた広河隆一氏(現在75歳)がドアを開けた。部屋に足を踏み入れた途端、杏子さんは広河氏にベッドへ連れて行かれた。恐怖で言葉を発せず、抵抗もできなかった――。

 現在都内の会社に勤務する杏子さんは、押し込めていた記憶に立ち向かうように、11年前の忌まわしい出来事について話す。

「ずっと自分にスキがあったからだと思おうとしてきました。でもいま振り返ると、あれは性被害でした。もっと早く声をあげていれば、別の女性が被害にあうのを防げたかもしれないと思うと、黙ってきたことに責任を感じています」

2004年に創刊した「DAYS JAPAN」

 杏子さんの証言は、世間の広河氏のイメージをひっくり返す衝撃的なものだ。詳しくみていく前に、まずは広河氏の人物像を紹介しておこう。

 早稲田大を卒業後、1967年にイスラエルのキブツに渡った広河氏はパレスチナ人の苦難を写真で記録し、フォトジャーナリストとして歩み始めた。帰国後も中東取材を重ねる一方、チェルノブイリ原発事故や薬害エイズ事件で被害者側に立った報告を続けた。

ウクライナ政府から「有功勲章」を授与される広河氏(2011年)

 2004年に月刊報道写真誌「DAYS JAPAN(デイズジャパン)」(以下DAYS)を創刊。「一枚の写真が国家を動かすこともある」をモットーに、15年間発行を続けている(同誌は経営難と後継者不在を理由に、19年2月の休刊を先日発表した)。

 平和・協同ジャーナリスト基金賞(99年)、早稲田ジャーナリズム大賞(02年)、土門拳賞(03年)など受賞多数。パレスチナやチェルノブイリの子どもたちの救援活動を展開し、3・11以降は福島の子どもたちの保養事業に力を入れ、彼に感謝する声も多い。

 私生活では、イスラエル時代に知り合ったフランス国籍のユダヤ人と結婚して離婚。90年ごろ、大手出版社の編集者である現在の妻と再婚している。