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秋元司議員逮捕で脚光 東京地検の“エース中のエース”森本特捜部長のウソのようなホントの話

2019/12/28

 カジノを含む統合型リゾート事業(IR)に絡み、秋元司衆院議員(48)が収賄容疑で逮捕された。現職の国会議員が逮捕されるのは、実に10年ぶり。政界に切り込んだ東京地検特捜部に注目が集まっているが、トップである森本宏特捜部長とは、一体どんな人物なのだろうか――。

 NHK時代に司法キャップなどを務め、共著に『伝説の特捜検事が語る-平成重大事件の深層 』(中公新書ラクレ 2020年1月刊)もあるジャーナリスト・鎌田靖氏が、“エース中のエース”と言われる森本氏の人物像、捜査の特徴を書く。

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「また何かやっているんでしょう?」「いやいや、全く、何にもないですよ」

私の質問に対して、にこにこ笑いながら完全否定した相手は、東京地検・森本宏特捜部長。

 2019年11月22日、東京・有明で開かれた、元東京地検特捜部長、熊崎勝彦氏の喜寿を祝う華やかなパーティーの席上でのやり取りだ。この時が初対面だった。こんな時「実は○○疑惑を内偵してるんですよ」などと応える特捜検事はまずいない。逆に「こんな席で失礼だぞ」と怒る検事ならいる。「朗らかに応対してくれただけ良しとしよう。ホントのこと言うわけないし」と思いながら辞した。

 それから33日後、特捜部はIR事業をめぐって中国企業から賄賂を受け取った収賄の疑いで衆議院議員・秋元司容疑者を逮捕した。国会議員の逮捕は実に10年ぶりだ。

逮捕された秋元議員 ©共同通信社

政界・官界・財界のすべてに切り込む森本特捜

 17年9月に森本氏が特捜部長に就任してから、特捜部は大型事件を相次いで摘発している。日産のカルロス・ゴーン元会長の電撃的な逮捕。文部科学省をめぐる汚職事件では同省の局長を逮捕。そして今回の秋元議員の逮捕で特捜部は政界・官界・財界のすべてに切り込んだ形となった。特捜の捜査が注目され久々に存在意義を示している。その特捜部を率いる森本部長とはどんな人物なのか?

森本特捜部長 ©時事通信社

 岐阜県出身で1992年、検事に任官。特捜経験は10年近くに及ぶ。かつては特捜在籍10年という職人のような検事もいたが、最近ではほとんどいない。これまでに村上ファンド事件や福島県知事汚職事件を手掛け、副部長時代には医療法人「徳洲会」グループの公職選挙法違反事件の捜査を指揮した。また法務官僚としても有能で、重要ポストとされる法務省刑事課長を務めている。検事には二つの系統がある。事件捜査に力を発揮するタイプ(“現場派”といわれる)と法務行政に強いタイプ(法務省の旧本館がレンガ造りだったことから“赤レンガ派”といわれる)に分かれ、互いにけん制しあっているのだが、森本部長はどちらの能力も兼ね備えているとされる。だから役所内では「エース中のエース」とか「将来の検事総長候補」という高い評価を受けているのだ。