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ここまでわかった「がんにならない」のはこんな人

寿命を伸ばす効果のない「がん検診」より「がん予防」

2017/05/04

 みなさんに問題です。

問)タバコと胃がんは関係ない。

 喫煙が肺がんのリスクを上げることはよく知られていますが、みなさんの答えはいかがでしょうか。ぜひ、本文を読んで確かめてみてください。正解はこの記事の最後に載せています。

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「がんの早期発見」より「がん予防」が大事

 さて、がん予防といえば、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。真っ先に「がん検診」と思う人もいることでしょう。確かに、がん検診は予防として行われていますが、正確に言えば「がんによる早死」を防ぐのが目的です。

 がんを予防するには、「がんにならない」のがベストです。これを専門用語で「一次予防」と言います。がん検診は、これに次ぐ「二次予防」にあたります。つまり、「がんになってしまったけれど、早く治療することで死亡するのを防ごう」というのが、がん検診の目的なのです。

 しかし、拙著『がん検診を信じるな』(宝島社新書)やこの連載で指摘してきた通り、がん検診は思ったほどの効果がなく、寿命が延びる科学的な証拠もありません。ならば、「がんを早く発見する」ことに一生懸命になるよりも、同じ予防をするなら「がんにならない」ことに力を入れたほうがいいのではないでしょうか。

国立がん研究センターの調査結果によれば……

 実は国立がん研究センターの研究グループがこれまでの住民調査などのデータをもとに、日本人のがんの原因として、どんな要素がどれくらいを占めているかを推計しています(Ann Oncol. 2012 May;23(5):1362-9.)。その研究成果に基づくがん予防法を徹底すれば、がんになるリスクをかなり下げられる可能性があるのです。

 どんな要素ががんの原因になっているのか、国立がん研究センターが作成したパンフレット「日本人のためのがん予防法」(平成27年2月)から抜粋してみましょう。

 まず、がんの原因として大きいのが「喫煙」です。とくに男性で影響が大きく、がん罹患の29.7%、がん死亡の34.4%が、喫煙の影響によるものと推計されています(女性は、がん罹患の5.0%、がん死亡の6.2%)。つまり、タバコは生涯吸わないこと、吸っていても早く禁煙することで、がんのリスクを大幅に減らすことができるのです。

喫煙が胃がん、食道がん、子宮頸がんのリスクを上げることは「確実」

 タバコといえば「肺がん」をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、喫煙は肺がんだけでなく、「胃がん」「食道がん」「膵がん」「子宮頸がん」のリスクを上げることも「確実」と判定されています。肝がんも「ほぼ確実」で、大腸がん(直腸がん)、乳がんも「可能性あり」となっています。つまり、喫煙は肺がんだけでなく、「全がん」のリスクを高めてしまうのです。

喫煙はあらゆるがんのリスクを高めてしまう ©iStock

 それに、喫煙の害はタバコを吸う人だけでなく、吸わない人にも及びます。いわゆる「受動喫煙」です。とくに女性はパートナーからの影響が無視できず、がん罹患の1.2%、がん死亡の1.6%と推計されています(男性はがん罹患の0.2%、がん死亡の0.4%)。喫煙はがんだけでなく、心筋梗塞や脳卒中のリスクも高めます。自分だけでなく、家族や周りの人の健康を守るためにも、やはり喫煙者は禁煙や分煙に努めるべきなのです。