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連載歴史・時代小説の歩き方

夫には向かない職業――女性視点の新選組小説

2015/07/04

genre : エンタメ, 読書

  7月といえば池田屋事件。幕末好き・新選組好きの女子がコンチキチンのリズムに胸躍らせ、お店に入るたびに心の中で「御用改めである!」と叫び、来客があるたびに心の中で「お二階のお客様、旅客改めでございます!」と叫ぶ季節の到来です。私だけですかそうですか。

 歴史上の人物というよりもキャラクターとして一人歩きしている部分はあるにせよ、新選組は女性人気が高い。負けゆく者の美学と並んで、「いい男各種あり〼」的キャラの豊富さが乙女心にロックオン。カリスマ、クール、天真爛漫、猪突猛進、知的、ミステリアス……どんな読者にもストライクど真ん中のメンバーが必ず一人はいる、それが新選組なのだ。

 まだ歴女なんつー言葉のなかった頃、幕末好き女子高生だった私は同好の士と「沖田くーん♡」「いややっぱり土方さんが」などとはしゃいでいたものだが、そんなミーハー女子高生に頭から水をぶっかけたのが北原亞以子『降りしきる』(講談社文庫)だった。芹沢鴨の情婦・お梅の視点で書かれた表題作には、それまでセクシー・ウエポンのイメージしかなかったお梅のまったく違った面が描かれていたのだ。

 お梅、可愛い! と思ったのが、新選組屯所となった八木家の女中・お清との会話。「うちの睨んだとこでは、土方はんも、お梅はんに気があるな」「うちはいやや、あんな男はん」とまあ、女子高生がクラスの男子の噂をしているのと変わらないのである。でも当然だよなあ。だって京の田舎にいきなり若い男たちが大勢来たんだもの、そりゃ騒ぐよ。

 でも呑気に騒いでもいられなくなる。土方とお梅がなんとなく互いを意識してるという状況で、お梅ははからずも芹沢の情婦にさせられる。そして新選組が暴れ始めたとき、北原亞以子はお梅にこう独白させるのだ。

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