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連載近田春夫の考えるヒット

彼らの「夢」を映像化? マジプリの新曲MV鑑賞――近田春夫の考えるヒット

2020/01/19

『Try Again』(MAG!C☆PRINCE)/『神さま お願い』(TFG)

絵=安斎 肇

 人はアイドル(の音楽)に何を求めているのか? この「人」が普遍的な意味の「人」たちの話なのか、あるいはこの国の文化に限ってのなにか固有の話なのか? ちょっとそこは俺にもよくわからないのだが、ただ、国内で普通に支持されるアイドルのサウンドや、歌詞における世界観が、ポップス/ロック発祥の地、英語圏のそれとはまたなんとなく違った――優劣ではないのでそこは誤解のなきよう――ものに、独自進化を遂げているような気のしないでもない。

 ま、あくまでも印象の範疇のことなのだが、いってみれば“ドリーミーな度合い”は濃いのやもしれぬ。すなわち基本、リアルな現実/社会を反映させることにあまり重きはおかない“作り”が主流だ。無論、全部がそうだとまではいわないが、ファンタジー、俗にいう“絵空事”や“綺麗事”が、より好まれる傾向にあるのはたしかだろう。

 そしてそうした“独自性”は、いつかしら伝統として、かつて以上にシーンに根付いてきているようにも映る今日この頃なのではあるが、さて。

 昨今目にするコトバのひとつが「読解力」だ。文章などを解釈する能力のことをいうのだそうだが、これがどうも我が国の若者たち、著しく低下してしまっているのだとか。

 自ら想像力の発揮を放棄する、要するにアタマを使わなくなった。モノを考えなくなった。極論すればそうなる。だけどそりゃそうだわね。そうやって暮らしていても、さほど困りゃしないのが、今のニッポンなんですから(笑)。

 AIの普及で、ますますそのような生活習慣の一般化に拍車がかかろうことだけは間違いないだろう。結果、ハッキリと進むのは、さらなる“クラス分け”だと私は思う。

 AIを提供/管理する側の立場に立つ人間達が、それナシでは生きてはいけぬ層をコントロールしようとする構造が、より国是的なものになっていくことだけは、火を見るより明らかな気がするからだ。

 そろそろついに、SFのような本格的デストピアの時代の到来となるのか? それはそれでワクワクする近未来の光景ではありますがね(笑)。

 ところで先ほどの“ドリーミー”だが、そんなコトバがふと口をついて出てきたのには、MAG!C☆PRINCEの新曲動画を観たことも大きい。観客の一人もいない状態の大スタジアムのフィールドで歌い上げるメンバーたちの姿を絵にしたものなのだが、そうした設定が、歌の内容というよりは、むしろ彼等の心情を思わせる。いつの日にかここをきっと満杯にするぞ! そんな「夢」を映像化している感じだったのだ。あ、もう彼等はとっくに満杯クラスなのかな? その実際はともかく、観終わり実感したのが、表現としての恐ろしいほどの分かりやすさのことであった。

 これなら読解力のない若者たちでも充分楽しめるだろう。

Try Again/MAG!C☆PRINCE(ZEN MUSIC)東海を拠点にしたボーイズグループ。人気上昇中のなか西岡健吾が卒業して4人体制に。

 TFG。

 テンプターズのカバーかと思いきやの『神さま お願い』。

神さま お願い/TFG(ビクター)本職は「刀剣乱舞」など2.5次元舞台俳優たちで結成されたグループ。本作で2枚目のシングル。

今週の“人”「オレはさ、人間的って人間にしかできないことを指すと思っているんだよ。人工的って非人間的に思われているけど、むしろより人間的だよね。シンセサイザーってあるじゃん。合成して音をつくる楽器だけど、第三のビールって、まさに合成してビールの味をつくってるわけだ」と近田春夫氏。「それで友人曰く、デジタルビールだって!(笑)」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

出典元

安倍「もう疲れた」9.7退陣表明

2020年1月16日号

2020年1月9日 発売

定価440円(税込)

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