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連載歴史・時代小説の歩き方

2016/10/01

genre : エンタメ, 読書

最も昌幸らしい最期の『真田三代』

 一旦は蘇生した『真田太平記』の昌幸だが、後日、トイレに行こうとしてお付きの女性に支えられ立ち上がったとき、突然意識を失ってそのまま亡くなってしまう。ところが、それまで昌幸は何度も死んだふりをして家臣をからかっていたので、このときも最初は信じてもらえないのだ。パパ……人を騙してばっかりだったからこんなことになるんだよ……。

 ここまでの2冊は意識を失ったまま亡くなるので、何かを言い遺す場面はない。それが描かれているのが、火坂雅志『真田三代』だ。この昌幸が最も『真田丸』のイメージに近い。なんせ「義にもとるようなことはしたくない」という信繁を「それが、真田一門に生まれた者の言うことか」と一喝するようなパパだからね。(連載第38回「のうきん」参照)。

『真田三代』では、死期が近づいた昌幸を、信繁と孫の大助が見守る。そこで昌幸は、こう言うのだ。

「ふたたび世に風雲が起きる前に、おのが命のほうが先に尽き果てようとは、不覚にも思わなんだわ」
「家康が最後の勝負に打って出る日を待たず死なねばならぬとは、返す返すも無念のかぎりじゃ」

 どこまでも合戦好きなパパである。太平とか平和とかの言葉は昌幸の辞書にない。そして孫の大助の手をとり、こう言い遺す。

「わしの代わりに、大坂城へゆけ」(中略)「この祖父には、大坂城を楯に、家康に勝利する秘策がある」

 ああ、パパっぽい! こうでなくちゃ! ちょっと出浦昌相も乗り移ってるっぽいところが更にいい。だが大助よ、話半分に聞いておけ。キミのおじいちゃんはけっこう読みをはずしてきた男だぞ。おじいちゃんがついた側はことごとく負けてきたんだぞ。果たしておじいちゃんの策略通りになるのか――やはり、この言葉で〆るしかないだろう。

 大博打の始まりじゃあ!

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