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酒好きの54歳女性が「孤独死」に至った真の要因

「ひとり暮らし」が悪いわけではない

そうなると、これまで「働く独居男性」の問題としてとらえられていた「所属コミュニティの消失」問題が、今後は女性に起こらないとも限らないのではないだろうか。

誤解してほしくないのだが、私はひとり暮らしを悪いことだとはまったく思っていない。むしろ、その気ままさをうらやましくも思う。ひとりのほうが、誰かと暮らすよりも自由でよいという方もおられるだろう。それは個人の選択の自由であり、他人がとやかく言うことではない。私がここでひとり暮らしをテーマとして取り上げた目的は、あくまでリスクについて言及するためである。

運び込まれた50代引きこもり女性の遺体

【CASE】女性 54歳 亡くなった場所:アパートの部屋

ここでは、ある女性の死についてとりあげてみたい。彼女は10年以上ひきこもりに近い生活を送っていた。人間関係に悩み、40歳の頃に仕事を辞めた。それから間もなくして離婚し、以降は近所に住む80代の両親の援助を受けながら、アパートにひきこもってほとんど外には出ていない。深夜にコンビニに買い物に行く以外、彼女が姿を見せることはなかったという。ある日、食事を持って訪ねた母親が部屋で倒れている娘を発見したが、すでに息絶えていた。死因がわからず、解剖することになった。

女性は54歳だった。運ばれてきた彼女の体にメスを入れ、腹を開けるとすぐ、表面がゴツゴツした肝臓に目が留まった。彼女は、「肝硬変」だった。

肝硬変とは、肝臓病のひとつだ。慢性的な肝機能障害が起きて、肝細胞の死滅、減少が進むと、線維化する。線維化とは、損傷部修復のために増生した線維組織が広がった状態のことで、それによって肝臓は硬くなっていく。肝臓が硬くなると肝機能が著しく低下するため、「肝臓病の末期」ともいわれる状態だ。

ただ、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、痛みを感じる神経がない。つまり、自覚症状のないまま、病気が進行しやすい臓器でもある。解剖に立ち会っていた警察官に、女性が病院に通っていたかどうかを尋ねると、やはり通院歴は見つからなかったという。