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酒好きの54歳女性が「孤独死」に至った真の要因

ひとり暮らしの過剰飲酒と死の因果関係

硬くなりすぎた肝臓は、時に血液が入り込めないほどになることもある。そうなると、行き場をなくした血液が食道粘膜の下を流れる静脈血管に逆流してしまう。次第に食道の血管がパンパンになり、破裂する可能性が高まるのだ。消化管の出血は、そのまま死因につながることが多い。彼女の胃にも出血の痕が残っていて、胃から腸の中には血液が溜まっていた。直接死因は、「消化管出血」だった。

法医学の現場では、消化管出血で死亡した人に出会うことは少なくない。ただし、私の経験上、その多くは男性だった。この女性もそうした男性と同じく、あるものに依存していたのではないか――。

“あるもの”とは、アルコールだ。消化管出血を見つけると、その人がお酒を飲む人だったかどうかを担当の警察官に聞く。たいていの場合、彼らが見つかった部屋にはお酒の空き瓶や空き缶がいくつも残っている。家の中にはほかに食べ物がない、というケースも珍しくはない。ひとり暮らしの心の隙間を酒で埋めているうちに、飲酒量が増え続け、肝臓を悪くするのだ。

聞けば、この女性もまた、相当な酒飲みだったという。実際に部屋をのぞいたわけではないため、その「相当」がどの程度のことを言っているかはわからない。しかし、彼女の部屋にもまた、焼酎やウイスキーなど、アルコール度数の高いお酒の瓶が複数転がっていたそうだ。

アルコールで亡くなるのは男性が圧倒的に多かった

ひとり暮らしで、朝から酒を飲み続ける。結果、肝臓を悪くして消化管出血で亡くなる。そして、法医学教室に運ばれて解剖される――そうした経過をたどるのは、これまで圧倒的に男性が多かった。私たちの法医学教室で解剖したアルコール依存症の人は、これまで男性が83.9%、女性は16.1%だ。

その死因は、3分の1が消化管出血などの病気で、3分の1は酔って転倒した際などに事故で亡くなるといった外的要因、残りの3分の1は不詳だった。病死の場合、その半数以上が消化器系の病気で亡くなっており、脳血菅系、呼吸器系、循環器系と続く。