昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/01/21

source : 週刊文春デジタル

genre : エンタメ, 芸能

“アヒル口”に熱狂したのは女子

 良し悪しは別として、“アヒル口”が女の切り札として流行したのも、アピールの対象は男じゃなく、女。あの口で甘えられて、まんまとそそられるほど、今の男は馬鹿じゃない。何とも不可解だが、アヒル口のモデルに熱狂したのは女子なのだ。日本の美意識は、今も相変わらず「カワイイ」が最優先されるのである。オリンピックの開会式にアヒル口揃いのユルキャラの行進だけは見せないでと願うばかりだが、そういえば、田中みな実も局アナ時代、アヒル口を乱発。写真集にもアヒル口と思しきカットがあって、そういう意味でも女性読者を意識しているのは明らかだ。

 かくしてブレイクの最大要因は、そうしたカワイさと体のギャップだったのではないか。

 あどけない顔なのに何だかエロい印象を「幼なフェロモン」と呼ぶが、そもそもTBSには幼なフェロモン枠というものがあったようで、田中みな実もおそらくはそこに属していた。ひょっとしてそういう自覚があったからこそ、遅れてきたぶりっ子キャラをあそこまで臆せずやり通したのかもしれない。

 いや、ぶりっ子といっても、昔の松田聖子的な計算は全くなく、既に死語にならんとするぶりっ子を面白おかしくパロディーにしただけ。なのに、あまりに“はまり役”だったものだから世間が誤解しただけなのだ。本物のぶりっ子であると。

元日本テレビアナウンサーで、現フリーアナウンサーの脊山麻理子。2014年にファースト写真集「SEYAMA」を、2018年には写真集「S」と「M」を同時出版している。しかし現在はレギュラー出演する地上波の番組はなくなってしまった ©AFLO

 その誤解のせいで、嫌いな女子アナの常連となったのに、平然とぶりっ子をエスカレートさせていったのは今更ながらあっぱれ、大した根性だ。とは言え、あそこまでキャラを立てなければ、フリーとなっても埋もれていく可能性は大。局アナ時代から、「みんなのみな実」と上目遣いで個人名を売っていたとすれば、素晴らしい策士である。

嫌われキャラが完全に板に付いたところでフリーに

 そして今の時代、むしろ炎上も恐れぬヒール系の方が、品行方正系より高い支持を得て好感度を上げるのは女も同じ。嫌われキャラが完全に板に付いたところでフリーになっているのがミソなのだ。有吉弘行や坂上忍の如く、全て承知の上でヒールをやるタイプは全くイジメ甲斐がなく、いっそリスペクトされることをこの人は知っていたのだろう。ただ上沼恵美子じゃあるまいし、さすがに毒舌ではリスキーだから、ぶりっ子で嫌われることにした……そういうことではないのか。

 従って、ぶりっ子演技も小林麻耶の上をいく。精神的な強さも女子アナ史に残るほど。グレイヘアで見事再ブレイクを果たした近藤サトと肩を並べるくらいに、女子力ならぬ女子アナ力の強い人、そう言っていいのである。つまり実際は、ぶりっ子をパロれるくらい世慣れている上に、逆境やアンチをものともしない強靭な心の持ち主。で、この強さも、ブレイクにつながっていることを見逃してはならない。