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2020/02/03

短時間睡眠が「生活習慣病」に直結する

 この報告以来、それまで睡眠研究にあまり関心のなかった内科、特に内分泌内科の医師たちも睡眠の重要性を再認識し、さまざまな調査が行われた。すると、睡眠制限をかけると大変なことが起きるという報告が次々と判明した。

・眠らないと、食べ過ぎを抑制するレプチンというホルモンが出ず、太る。
・眠らないと、インシュリンの分泌や反応が悪くなって血糖値が高くなり、糖尿病を招く。
・眠らないと、交感神経の緊張状態が続いて高血圧になる。
・眠らないと、精神が不安定になり、鬱病、不安障害、アルコール依存、薬物依存の発症率が高くなる。

 夜更けまで起きていて、やけにたくさん食べてしまった経験が、あなたにもあるだろう。それはホルモンの働きだが、短時間睡眠が肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病に直結するのは上記を見れば明らかだ。

 さらには、慢性の睡眠不足は、癌のリスクや認知症のリスクも高めることが次第に明らかになってきた。睡眠は、休息やホルモンバランスの調整だけでなく、記憶の整理定着、免疫力の増強、脳の老廃物除去等、病気の発症と直接関わる重要な機能があることを考えれば当然の報いかもしれない。

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「睡眠負債」からの「眠りの自己破産」へ

「今日はちょっと寝不足だ」「最近、睡眠不足でね」あなたもこうした言葉を交わしたことがあると思う。この場合、「眠りが少し“足りない”だけでたいした問題ではない」というニュアンスではないだろうか。

 しかし米国スタンフォード大学の睡眠研究者は、睡眠が足りていない状態を、「睡眠不足」ではなく「睡眠負債」という言葉を使って表現する。借金同様、睡眠も不足が溜まって返済が滞ると、首が回らなくなり、終いには「眠りの自己破産」を引き起こすのだ。

 アルコールや薬物を摂取した運転が危険なことは、よく知られている。睡眠負債を抱えた人のパフォーマンスも同じように危険なものだ。法の規制もなく、その危険性を本人が認識していないという点では、飲酒運転以上に危険かもしれない。

 睡眠負債があると、日中の行動に大きなマイナス影響がある。一見、普通に起きている人でも、実はすべての機能が正常に働いているわけではない可能性が非常に高いのだ。

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