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連載桜庭一樹のシネマ桜吹雪

『ジョジョ・ラビット』――桜庭一樹のシネマ桜吹雪

普遍的な人間の成長物語

2020/02/02

 子供の頃、わたしにも“空想の友達(イマジナリー・フレンド)”がいた……と言えたら、素敵な書き出しになったんだけど、いなかった。小学校高学年のとき、そういう概念があると知り、「自分も作ってみよう!」と思ったんだけど、そもそもそういうふうに作りだすものじゃないしで、むりでした。という、マヌケなだけでとくにオチもなにもない話なんですが……。

 なので、“空想の友達”が出てくる小説や映画に触れるたび、未だに敗北感(?)に包まれます。

 さて。この作品は、第二次世界大戦下のドイツを舞台にした、孤独な少年の甘くてほろ苦い成長物語なのだ。

©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation &TSG Entertainment Finance LLC

 十歳のジョジョは、ママと二人暮らしの、愛国心あふれる少年。だがある日、期待に胸を膨らませてヒトラー青少年団(ユーゲント)の合宿に参加したものの、優しすぎてウサギを殺せなかったせいで“ジョジョ・ラビット”という不名誉な仇名をつけられてしまう。傷心のジョジョを癒す“空想の友達”は、なんとヒトラー総統そっくりの大人の男! だがジョジョはあるとき、自宅の隠し部屋に母がこっそり住まわせていたユダヤ人少女エルサをみつけ、愛するようになった。生身のユダヤ人は、学校で習ったのと違って、劣ってもいないし、怪物でもない……。ジョジョは次第に内なるヒトラー総統を信頼できなくなって!?

 物語は、ジョジョが“自分”という檻から出て、“他者”であるエルサを受け入れるという、普遍的な人間の成長を描いている。同時に、偏見を持って憎み合う者どうしは、ジョジョのように相手と顔と顔を合わせ、個人として交友することでのみ、本当に理解しあえ、歩み寄れるのだという、とても現代的な問題提起をする作品なのだと、わたしは感じました。

 洋服や靴、インテリアなども究極的に素敵! 悲しい物語のそこここで、美にも目を奪われました。

INFORMATION

『ジョジョ・ラビット』
全国上映中
http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/

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