昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

島根立てこもり「恐怖の18時間」 女性従業員が「奥さまを1人にできない」と人質に

 島根県出雲市の冷凍物流会社「上田コールド」で発生した立てこもり事件。現場で推移を見守り続けた上田広美社長(64)が、「人質になった従業員にもしものことがあったらと思うと、不安で仕方なかった」と当時の心境を明かした。

◆◆◆

 千葉市の無職・中尾懐聖容疑者(23)が同社を訪れたのは1月14日午後2時15分頃。対応した上田社長の妻の常務が語る。

「社長は不在だと伝えると、『あなたはこの会社で社長の次に偉い人ですか』と聞かれた。会話をしながらコートの下に牛刀のような刃物を隠し持っているのが見え、『これはただ事ではない』と思いました」

立てこもり時の中尾容疑者(ANNより)

 中尾は常務に指示を出し、5人の従業員を外に出させたが、「奥さまを1人にできない」と留まったのが人質となった女性従業員(40)だった。常務が続ける。

「2階の応接室に立てこもることを決めると、彼は5脚のソファを窓側に並べていきました。その後、カーディガンを脱ぐと、左腕の袖に隠していたもう1本のナイフが落ち、腕から血が流れ出ていました」

 心配した常務がタオルを差し出すと、中尾はか細い声で「ありがとうございます」と応じる。押し入ってから約20分後、「おばさん、解放してあげるからね」と、外に出るよう促した。

「常務が1階に降りてきたとき、警棒や刺股(さすまた)を持った捜査員2人が駆けつけました。すると中尾は牛刀を見せて『これ以上近づくな!』と叫んだので、捜査員は引き下がらざるを得なかった」(従業員)

早朝、捜査員が窓越しに内部を窺う

 外出先から戻った上田社長は捜査員にこう告げた。

「(中尾の)お父さんかお母さん、呼べよ!」

 捜査員は「それが社長、なかなかうまくいかない。『説得に来てくれ』と頼んだが『いけない』と。ちょっと複雑なんよ」

「何を望んでるんですか」

「金などではなく、Aという男の従業員を探している」

 だが、Aは昨年8月、すでに退社していたのだ。