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連載近田春夫の考えるヒット

成りあがったBTSに、挑戦を求めるのは“無い物ねだり”か――近田春夫の考えるヒット

2020/02/24

『Black Swan』(BTS)/『9と4分の3番線で君を待つ(Run Away) 』(TOMORROW X TOGETHER)

絵=安斎肇

 一口にヒット曲とはいうけれど、その意味するところも昔とは大分違うふうになってきているのだなぁと、時々思う。音楽家への興味/関心にしてもそうだ。たとえば今年アメリカでグラミー賞四冠が話題のビリー・アイリッシュである。そんな彼女とて、では我が国一般の知名度はどうなのかといえば、決してそんなに高くはないだろう。

 いずれにせよ「ひとつことを不特定の多くが共有する」という、ブーム/ムーブメントを形成するのは――少なくとも音楽産業では――日を追うごとに難しくなってきている。昨今の商業音楽をめぐる現象/状況を眺めると、うなずかざるを得まい。

 BTSにしても、出す曲出す曲どこの国でも必ずやチャートのトップランクインを約束されるような、韓国の生んだ、今や押しも押されもせぬ、世界レベルでの評価を受けるスーパーグループである。そんな絶大な売り上げを誇る存在の彼らでさえ、ビートルズのようにはだれもがメンバーの顔や名前を知っている訳ではないだろうし、いちいちのシングル曲タイトルなど、ファン以外には答えられる人のほうが、おそらく少ないと思う。

Black Swan/BTS(配信/Big Hit)昨年夏より長期休暇をとっていたBTSのカムバック作。2月末発売のアルバムより世界先行配信。

『Black Swan』も、それこそ93カ国でiTunesチャート1位の勢いだが、日本語版はまだ出ていないそうなので、とりあえずネット検索をすると、アメリカの番組とおぼしき、“TV初お目見え”を謳った映像が一番に出てきた。

 歌詞はどうやら韓国語と英語の混ざったもののようだった。以前から“ヒップホップ的な英語”と韓国語には、ある種のキツイ響きを持つという点で、通底するものがある、相性がいいなと思っていたのだが、これなどもそうした部分でバランスよく作詞がなされていて、何が歌われているのかよく分からない俺のような人間にも、彼らの歌唱の醸し出す気配には、近未来SF映画の景色のような緊張感/スリルがあって、楽しめる。

 ただ、バックトラックのサウンドプロダクションについては、王道過ぎるのでは? というのが率直な感想だった。いい換えればなにかしらの挑戦/冒険が欲しかったのだが、今のBTSの置かれているポジションでは、そこは“無い物ねだり”になってしまうのかなぁと……。

 思えば、かつてまだ彼らが防弾少年団の名の方が通りのよかった頃、このページでも取り上げて、jpopは韓国に相当に遅れをとっている、そんな感想も持ったものだが、それにしてもBTS。ここまで国際的な活躍をするようになるとは! 『Black Swan』の風格に、色々な思いも交錯してしまう私なのであった。

9と4分の3番線で君を待つ(Run Away)/TOMORROW X TOGETHER(「MAGIC HOUR」収録・Big Hit)BTSと同じ事務所の後輩グループ。

 新鮮さというのなら、後輩筋にあたるTOMORROW X TOGETHERの、日本デビューCDに軍配が上がるだろう。最近あまり耳にしない、ブギーというかスウィング感のあるビートをうまく取り入れたアレンジが軽やかで、ヘヴィなサウンドの多いヒップホップのなかでは、自然と際立った印象を与えてくれるのだ。

今週の告知「2月25日(火)は皆さまご存知オレの誕生日。ことしは活動50周年というだけでなく、69歳=ロックの歳ということで、バースデイライブを華々しくやりますよ。シークレットゲストやハプニングイベントなどいろいろ用意していますんで、ぜひ来てください!」と近田春夫氏。「原宿のクロコダイルにて。チケットはすでに僅少だよ!」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

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