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「都会の人は誤解している」全市町村一周青年が、過疎村・秘境村で見たもの

2020/02/22

「1,741ある日本の全市町村へ行く、全てのまちで写真を撮る夢が本当に叶いました」

 ツイッターにこのように投稿し、大きな反響を呼んだ青年がいることをご存知だろうか。2年かけて全市町村一周の旅を敢行した、広島大学経済学部4年生・仁科勝介さん(23)に道中について聞いた。

仁科勝介さん

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原付による日本一周計画、初日に転倒し大怪我に

 まさかこんなことになるなんて……。2018年3月27日、僕は山口県山口市の病院で車椅子に乗りながら天井を見つめていた。

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 その前日、僕は岡山県倉敷市の実家から、原付バイクに乗り、日本にあるすべての市町村を廻る旅に出発した。その数、1741。最初の目標は9カ月かけて1000市町村廻ること。これが達成できたら、大学在学中に1741すべての自治体を廻り切ろうと考えた。

 

 家族に見送られ、実家を出たのが前日の早朝のこと。相棒のカブ号(排気量110ccの中古のスーパーカブ)に跨り、まずは西に向かい、九州に渡り、鹿児島を目指す。

 スピードは出さない安全運転を心がけていたが、事故は思いがけないところで起きた。片側一車線道路を進んでいたところ、後ろから車が来たので、側道に寄ったら、いきなりカーブだ。しかも、路面には砂利が溢れている! カブ号はスリップしてバランスを崩し、僕はみごとにこけてしまった。

 起き上がると骨折はしていないようだったが、右ひざが大変なことになっていた。肉がごっそり削げて、骨が見えていたのだ。タオルで膝を縛るが、すぐに赤く染まった。今日の目的地である山口市の親戚の家まであと200キロもある。右足の激痛をこらえながら、カブ号に跨るとアクセルを開いた。

 そこから6時間ほどかけて、親戚の家に着いた。すぐに病院に行く。最初の夜間病院では断られ、2軒目でようやく診てもらえた。医者からは「なぜ救急車を呼ばなかったのか」と怒られ、「明日、九州に渡りたい」と言うと、呆れられた。「あり得ない。全治半年、悪かったら、右足がなくなるかもしれない大怪我なんだよ」と。

 こうして僕の日本一周旅は、初日にして大きな壁にぶち当たってしまった。