和泉洋人首相補佐官(66)と、大坪寛子・厚生労働省大臣官房審議官(52)が、海外出張の際、公費でコネクティングルームに宿泊していた問題が国会で追及される中、「週刊文春」は、和泉氏の公私混同疑惑を深める音声を入手した。音声によれば、和泉氏は、大坪氏と関係が悪化していた独立行政法人の幹部を呼び出し、人事や予算について言及した上で、大坪氏と「ちゃんと付き合ってもらわなければ困る」と強く要求していた。
昨年7月5日、和泉氏は、首相官邸の補佐官室にAMED(日本医療研究開発機構。独立行政法人の一形態の国立研究開発法人)の幹部3人を呼び出した。当時、大坪氏は、内閣官房の健康・医療戦略室次長として、AMEDを担当していたが、高圧的な言動や調整能力不足もあって、コミュニケーション不全に陥っていた。
音声によれば、和泉氏は、次のように語っている。
「大坪次長もさ、激しくて皆さんとうまく行っていないかもしれないけど、彼女は健康・医療戦略室次長に残すし、AMED担当室長になるから。そういうつもりでちゃんと付き合ってもらわないと困る」
大坪氏は昇進させるとする一方で、AMEDに対しては「組織を見直す」と人事権をちらつかせたり、「財務省が全面的に協力する」「あなた方がどういうつもりか知らないけど、そんな生易しい話じゃない」などと予算にも介入することを示唆していた。和泉氏は、首相補佐官の強大な権力を背景に、大坪氏の意向に従うよう“圧力”をかけていたことになる。
公務員制度やガバナンスに詳しい、元財務官僚で明治大学公共政策大学院教授の田中秀明氏が指摘する。
「独立行政法人の人事権は大臣にあるので、そこに介入することは問題。内閣法上、補佐官は総理の命を受けて内閣の重要政策の企画について総理を補佐するのが役割であり、行政機関に対する指揮命令権はないため、補佐官の分を越えている。仮に、その独法の役員が適切に仕事をしていないのであれば、補佐官が総理に実情を報告し、総理が直接指示するべき。総理の指示を、補佐官が伝言・代弁することはあっても、首相の指示もなく『総理に代わって』指揮するのであれば、内閣法に違反します」
和泉氏を直撃すると、当初、「そんなことはありません」と答えたが、重ねて聞くと「全部ノーコメント」と回答した。
大坪氏と公費を使った“不倫出張”を繰り返してきた和泉補佐官が、新たに大坪氏のために行政を歪めていた疑惑が浮上したことで、さらに説明を求める声が高まりそうだ。
2月20日(木)発売の「週刊文春」では和泉氏の音声の全容や、新型肺炎の対応にあたっている大坪氏の近況、過去に神奈川県知事の黒岩祐治氏を大坪氏が激怒させていた"事件"、さらには、和泉氏が直撃に初めて語った「大坪氏とのコネクティングルームを求めた理由」についても詳報している。

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