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連載桜庭一樹のシネマ桜吹雪

『ハスラーズ』――桜庭一樹のシネマ桜吹雪

友情の共同体 in N.Y.

2020/03/01

 民俗学の本に、確か“仮宿”というのが出てきたことがある。子供から大人になる途中の少年や少女が集められ、期間限定の共同生活を送る家のことだ。ここを出るときは皆、もう大人で、それぞれの人生に旅立つというわけで……。考えてみると、現代では、学校やサークル、シェアハウスとかが一種の“仮宿”なのかもしれないなぁ。

 大人になると、仮宿の仲間とはバラバラになるが、挫折したり困窮した時には、ふとまた戻りたくなったりもするものだ。

 でも……?

 さて、この作品は、N.Y.に生きる女性ストリッパーの“友情の共同体”の成立と崩壊を描く、社会派犯罪映画なのだ。

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 アジア系移民の娘デスティニーは、祖母の借金を返すため、学業をあきらめ、ストリップクラブに勤める。初めはうまくいかないが、やがてジェニファー・ロペス演じるカリスマ的な先輩ラモーナと通じ合って仲間となり、売れっ子に。女たちは結束し、「まるでハリケーン!」な生活を楽しむものの、二〇〇八年のリーマン・ショックで客が激減。デスティニーも仕事を辞め、子供を産み、一度は仲間たちから遠ざかった。

 しかし、景気悪化の中で生活に困り、再び夜の街へ……。大好きなラモーナと再会するが、今度は美人局(つつもたせ)で稼ぐ犯罪集団一味となってしまう。楽しかったころの幻影と、苦々しい現実の間で、“友情の共同体”は音を立てて崩壊していく……。

 わたしはこの映画を観て、学校に行けなくなったデスティニーにとって、ストリップクラブこそ“仮宿”だったんだと思いました。誰しも辛いときは青春時代に戻りたくなる。でもそれは過去を生きることであり、内から腐って悪夢に変わることもあるのだと考えると、胸に複雑怪奇な思いがドッと湧きあがるのでした。

 デスティニー役のコンスタンス・ウー(『クレイジー・リッチ!』主演)の名演は必見です。

INFORMATION

『ハスラーズ』
TOHOシネマズ 日比谷ほかで上映中
http://hustlers-movie.jp/

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