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連載近田春夫の考えるヒット

ヒゲダン他、昨今の歌詞世界の“ハッピーじゃない”感じ――近田春夫の考えるヒット

2020/03/02

『I LOVE...』(Official髭男dism)/『PHOENIX』(BURNOUT SYNDROMES)

絵=安斎肇

 若き日にロックと出会わなければ自分は音楽の道に進むこともなかったと思っている。

 自分にとってロックとは何なのか? それこそみうらじゅんではないけれど、人生の3分の2はそのことを考えてきたかもしれない(笑)。

 少なくとも、時代とともにロックの姿が変貌していくのは、目の当たりにしてきた。

 この50年を振り返ってみてひとつ思うことは、技術職的な側面の進歩のことだ。

 かつては、ロックのバンドマンとスタジオミュージシャンでは、かたや人気商売、一方は職人/裏方と、実際腕にも相当の開きがある、いってみれば“稼業違い”だった。

 事情が変わったのは、ボズ・スキャッグスのバックを勤めていた名うてのプレイヤーたちが、TOTOを名乗り“ロックミュージシャン”として人気を博してきたあたりのころからだろうか。気がつけば、いつのまにか、マーケットがロックに従事する人々に求める演奏能力のレベルは、加速度的に厳しくなっていったようにも思う。

 その功罪ともかく、もはや、正確さより“味”というかルーズさこそ魅力という、そんなものが通用する/売りになるのは、冗談抜きに、ローリング・ストーンズぐらいなものになってしまっただろう。

 それにしても、この頃の日本のバンドときた日には、もう、皆恐ろしいほどに上手だ。

 今や、若者たちの圧倒的な支持を集める存在となった、Official髭男dismなどにしてもそうだ。

I LOVE.../Official髭男dism(PONY CANYON)昨年5月に出した「Pretender」がいまだランキング上位を守る彼らの4枚目シングル。

 新曲『I LOVE...』の映像が、演奏風景の演出なのだが、この七面倒くさい構成/構造の楽曲をいとも易々とこなしていく様子が収められている。ただ、そうした彼らの超絶技巧に圧倒されながらも、結局耳に残るのはボーカルの声だったりするから面白い。

 三大ギタリスト中、クラプトンだけが何であんなに人気なのか? それは、あの喉があるからだ。

 Official髭男dismの場合もその伝というか、この声なかりせば、ここまでのブレークもなかったのではないか? そんな気がしてしまうぐらい印象の強い、発声なのである。

 それはともかく、今の日本のロック/jpopでなにより気になるのは、歌詞世界のことかも知れない。

『I LOVE...』の内容にしても、主人公の神経の繊細さは相当なものだ。俺には痛々しくさえ思えてしまう。

 先週の家入レオや東京事変にも同じようなことを感じたのだけれど、ラジオなどでときおり耳にする、最近の、そこそこ売れている、“アーティスト系”の曲の歌詞に共通するのは、その根底に流れるものが、決してハッピーなものではないということである。

 よく「病んでる」といういい回しを使うけれど、なんだか今の日本、ちょっと全体的に少しそっち行っちゃってるのかもねぇ……?

PHOENIX/BURNOUT SYNDROMES(SONY)2005年に結成の“3人組青春文學ロックバンド”(定型紹介)。歌詞に力を入れているという。

 PHOENIX。

 この映像も、なんか観ていて幸せな気分にはなれなかったなぁ……。

今週のピックピク「本文でも書いたとおり、最近jpopにくらい曲が多いからさ、オレが手本というわけではないけど、明るい新曲を出したよ! 名付けて“近田春夫のオリパラ音頭”。あの大イベントに賛成の人も反対の人もおありでしょうが、ぜひご覧になってくださいませ」と近田春夫氏。「YouTubeで、無料で見られるから、オレの力量を見てくれよ!」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

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