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新型肺炎で「日本の景気、もっと悪くなる?」経済学者に聞いてみた――「25兆円市場」への影響

10月の消費増税との関係はあるのか

2020/02/29
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 新型コロナウイルスの感染拡大が一層深刻化するなか、2月28日の日経平均株価は一時2万1000円を割り込み、5日連続で下落した。

 政府によるイベント自粛呼びかけなどを踏まえて、音楽ライブや、レジャーランドの営業を中止する動きが広がり、2月27日には、安倍晋三首相が全国の小中高校に「3月2日からの臨時休校」を要請。新型コロナウイルスによる経済への影響が心配される。

日経平均株価は一時2万1000円を割り込んだ ©時事通信社

「日本経済はどれだけ悪くなるのか」「昨年10月の消費増税との関係は?」「とくに深刻なのはどの分野なのか」

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 新型コロナウイルスの影響で巻き起こる世界的株安や日本経済への影響について、内閣府規制改革推進会議委員も務めた、経済学者でエコノミストの明治大学准教授・飯田泰之さんに解説してもらった。

◆◆◆

【新型コロナ上陸前】日本の経済状況はどうだったのか

――日本では昨年10月の消費増税から「景気が回復していない」「成長率が落ちている」という声がありました。2月17日に内閣府が発表した19年10-12月期のGDP速報値では、前期比年率でマイナス6.3%と大幅に低下しています。まずこれまでの日本の経済状況(トレンド)を教えてください。

飯田 過去10年間の日本の経済状況をまとめると

(1)2012年末から2014年はじめまでの急速拡大期

(2)2014年から2016年までの踊り場(絶対水準としての景気は悪くないが改善は少ない)

(3)2016年半ばから2018年半ばにかけての着実な成長期

(4)2018年半ば以降の景気縮小傾向

 に分類できます。海外の研究機関では(2)の「2014年から2016年までの踊り場(絶対水準としての景気は悪くないが改善は少ない)」を景気後退期と判断しているケースも少なくありません。

 2013年から2016年にかけては株価と雇用の拡大のみが先行しましたが、2016年以降はこれに加えて地価と所得の上昇が見られるようになりました。

10月の消費増税によるダメージ

 景気動向指数を見ると、2018年の半ばから(もともと低位安定していた)消費の縮小が目立ち、2019年になると景気動向指数を用いた機械的な景気判断にしたがうなら景気は「悪化」していると判断できる状況です。すでに景気後退期に入っている中で行われた消費増税は、日本経済に深刻なダメージを与えています。

景気動向指数 令和2年12月速報値――内閣府
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/preliminary1.pdf

 景気に後退期があるのは致し方ありません(永久に好景気ということはありません)。現下の問題はすでに景気後退期に入っている中でそれを加速するような消費増税を行ったことにあり、その困難な局面の中で新型コロナウイルスの影響を受けることになった不運にあります。