昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載THIS WEEK

中国「新型肺炎対策」83歳のリーダー 習政権と対立で突然姿を消す可能性

 振り返れば、中国の習近平国家主席が政権の危機に直面したのは1月中旬だった。湖北省武漢市で発生した新型肺炎について、地元政府が「蔓延はない」と消極的な発表を続ける一方、市内の病院はすでにパニック状態に陥っていた。習政権は真実の公表を1人の「英雄」に託した。

 1月19日に政府の対策責任者に任命された鍾南山医師(83)は、翌日、中国メディアの取材に「ヒトからヒトへの感染は明らか」「治療にあたった14人の医療従事者が感染している」などと、衝撃の事実を次々に暴露。

呼吸器疾患の最高権威 ©共同通信社

 だが中国社会は混乱しなかった。鍾氏が「ウイルスを押さえ込む自信がある」とも述べたからだ。共産党関係者は「中国を救った。彼にしか果たせない役割だった」と絶賛する。

 1936年南京生まれ。小児科医の父と看護師の母を持ち、早くから医師を志した。運動能力にも優れ、22歳で当時の400メートル走の国内記録を樹立。妻もバスケットボールの代表選手だった。80歳を過ぎた現在もウェートトレーニングを欠かさず、筋骨隆々の肉体を維持する。「健康が最大の免疫力」との考えからだ。

 その名を中国全土にとどろかせたのは、2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の対応だ。「感染は抑制されている」との政府の安全宣言に、「医学的にそんなことは言えない。でたらめだ」とかみつき、陣頭指揮を執った。政府批判が厳しく制限される中国で、拘束覚悟の行動に、人々は賛辞を惜しまなかった。