2月21日午前11時、千葉地裁の法廷に黒縁メガネに黒のスーツ、白いタオルを持った栗原勇一郎被告(42)が入廷する。やつれた印象の被告は満員の傍聴席に向けて、やや伸びた坊主頭を深々と下げた。メディアの前で初めて見せた言動からは、彼の“二面性”が浮かび上がってきた。
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昨年1月、千葉県野田市で小学4年の娘・栗原心愛(みあ)ちゃん(当時10歳)を虐待の末に死亡させたとして、傷害致死罪などに問われている父・勇一郎。初公判の冒頭、震える手で茶色の封筒からメモを取り出し、
「みーちゃん、本当にごめんなさい。できることは、事実を明らかにすることだと思っています」などと涙ながらに謝罪を繰り返した。
一方、心愛ちゃんに食事を与えず、冷水を浴びせたりして死亡させた傷害致死罪については「争いません」と言いつつも、虐待の事実はなかったと主張していく。
「妻に指示をして娘に食事を与えないようにしたことは一度もありません」
「冷水のシャワーを浴びせ続けたことはしていません」
だが、心愛ちゃんは全身ずぶ濡れの状態で発見されている。胃にはほとんど内容物がなく、服で隠れる部分に集中して複数の痣が残り、頭皮も髪が抜けて赤く腫れていた。
「約5秒、90度」被告の不自然なおじぎ
死亡状況を説明する際、勇一郎はうつぶせで泣きじゃくり、赤くなった目や鼻をタオルで拭っていた。
ところが、その涙とは裏腹な当時の様子を、救急隊員がこう供述している。
「(被告は)イライラした様子だった。最後のやりとりはいつだったかと聞くと、『さっきだよ。暴れたのでシャワーをかけたら動かなくなった』と答えました」
傍聴した司法記者は、「入退廷のたびに長い時で約5秒、90度ほどおじぎをしていた。不自然なくらい真摯な態度に、演技じみたような違和感を覚えました」と印象を語る。