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借金のために大手企業を辞職……原因はまさかの「宝くじ依存」だった

一獲千金の誘惑 #1

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【1】ギャンブルの沼 3 一獲千金の誘惑(上)宝くじ依存で借金。退職金目当てに辞職、債務整理へ…

【1】ギャンブルの沼 3 一獲千金の誘惑(上)宝くじ依存で、多額の借金を2度。退職金目当てに辞職、そして債務整理…

 福島県の40歳代男性Aさんの借金総額は400万円を超えていた。複数の消費者金融から限度額いっぱいに借り続けた結果、返済に行き詰まり、自分の力だけで解決する道筋は、完全に見失っていた。残された手段は、「任意整理」「民事再生(個人再生)」、もしくは「自己破産」しかない。債務整理の相談のため、Aさんは地元・郡山市の司法書士事務所「あさか事務所」を訪れた。

 オフィスで応対した安藤 宣行(のりゆき) 代表が、借金の理由を尋ねると、「病気の家族の治療費のためだった……」と 憔悴(しょうすい) した様子で話した。

 「大変でしたね。なんとか整理をしていきましょう」

 元気づけるようにそう言いながら、Aさんの職歴書を見た安藤さんは、即座に違和感を覚えた。

大手企業を「自己都合」で退職する理由

 Aさんは30歳代のころ、県内で名の知られた大手企業を「自己都合」で退職していた。すぐに、別の地元中小企業に再雇用されているが、かつての勤務先に比べると、待遇や収入の面で大きく見劣りがする。会社を辞める理由は人それぞれとはいえ、家族の医療費で多額の借金を抱えている事情を考えると、この「自己都合」は 腑(ふ) に落ちない。

 もちろん、理由はどうであっても、司法書士としては、全力を尽くさなければならない。安藤さんは、すぐにAさんの債務整理に着手した。

 借金の内容を検討すると、いくつかの消費者金融には「利息の過払い金」が発生していることがわかった。手続きで返還を求めることができる。そのことを伝えると、いきなりAさんの表情が変わった。「金はいつ戻ってくるのか?」と 執拗(しつよう) に尋ねてきた。いくらかの過払い金が返還されても、借金がチャラになるわけではない。すぐに別の債務返済に回す必要がある。

 にもかかわらず、それ以降のAさんは、安藤さんの顔を見るたびに「いつ、現金は手に入るのか」ばかりを気にするようになった。家族の治療費でやむを得ずに借金した人が、目先の現金に固執することは明らかに異様だった。