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「コンサート中止で3月の収入もゼロ」 新型コロナで“貧困”に苦しむイベントスタッフ、演奏家

2020/03/16
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 世界中をパニックに陥れている新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)。日本でも混乱が続き、政府は2月26日に「感染拡大を防ぐため、スポーツや文化イベントの中止や延期」を要請した。以降、多くのアーティストが相次いでコンサートの中止を発表し、プロ野球のオープン戦や大相撲は無観客で実施されるなど、異例の事態となっている。

 SNSにはコンサートの中止を嘆くファンの声があふれているが、エンタメ業界は死活問題に発展している。新型コロナ騒動に巻き込まれ、突如として働く場を奪われてしまった人々に話を聞いた(取材・文=真島加代/清談社)。

コンサート参加者に新型コロナウイルスの感染が相次ぐ「大阪京橋ライブハウスArc(アーク)」 ©時事通信社

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30万円の収入が、2月後半からゼロに

 某イベント企画運営会社のアルバイトとして働いている中田香菜さん(仮名・24歳)は「3月は一度も仕事をしていない」と話す。

――中田さんの会社の業務内容を教えてください。

中田香菜さん(以下、中田) イベント時の舞台の組み立て、コンサート場内の案内、物販や出演者向けのケータリングの手配など、イベントに関するあらゆる業務を行っています。私は短期で入るアルバイトを統括する部署にいるので、基本的には現場に出ません。

 普段なら、担当した現場の数に応じて月に30万円前後の収入がありますが、2月の後半から一度も出勤していないので収入はゼロです。アルバイトの掛け持ちもしていないので、このまま自粛の状況が続くと3月は給料の大幅減か、無収入になりますね。

©iStock.com

――新型コロナの影響が出はじめたのはいつ頃でしょうか?

中田 2月の初めから不穏な空気がありました。当日入る予定だった学生アルバイトから「ウイルスが怖いので出たくない」という連絡が入るようになって、人手が足りず、私も現場に出ていました。また、イベント業務は接客業なので、本来マスクの着用は禁止なのですが、アーティストのスタッフ側がマスクを用意してくれたりと、特例続きでした。私自身は2月初め頃は「新型コロナってそんなに大変なの?」と楽観視していましたね。

――政府の自粛要請があるまで、アーティスト側もコンサートの中止に踏み切れずに困惑している印象でした。

中田 政府の自粛要請が出る前から、企業の展示イベントは続々と中止されていたんです。でも、ミュージシャンのコンサートは、チケットの払い戻しなどの問題があって、自主的にはなかなか中止にできなかったのかも。2月26日の政府が自粛要請を出したあと、うちの会社で予定されていたコンサートはすべて中止されました。うちの会社は関わっていないので状況はわかりませんが、2月29日と3月1日に東京事変がライブを決行したのは驚きましたね。