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ダイヤモンド・プリンセス号「失敗の本質」――なぜ政府は海上保安庁に頼らなかったのか?

「あのような超大型客船の構造に、海上保安庁は精通しています」

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 2月3日に横浜に入港した英国船籍の大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」(乗客乗員合わせて約3700人)からは、合計696人もの新型コロナウイルス感染者を出した。

 検疫のために14日間も乗客乗員を船内隔離したことで、日本政府は世界各国から「人道上の大きな問題」と、囂々たる非難を浴びることになった。さらに、船内における感染の拡大を許してしまったことは、医療先進国であるはずの日本政府にとって大きな汚点となってしまった。

船内で作業にあたっていた人々 ©共同通信社

 しかし、クルーズ船感染者に対応した医師たちの多くは、これから日本がしなければならないのは過去の批判ではない、と強調する。

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「発信される情報に完全な信頼をおけない中国や、分析の余裕もなく対応だけに追われる韓国を除き、クルーズ船の数百名にも及ぶ多くの感染者に対応した日本だからこそ、政府の対応への反省を教訓とし、今後、重症患者の拡大対策に生かすべきです」(対応にあたった医師)

クルーズ船に対応できる専門家は存在していた

 では、具体的な教訓としては何があるのか?

 そのひとつは、クルーズ船のような密閉された施設での対応が必要になったとき、専門家を投入することだ。

 現場で対応にあたった医師のうちの1人は、こう語る。

厚労省・加藤勝信大臣は対応に追われる

「豪華客船の中は特殊な構造となっており、その中で乗客管理を安全な態勢で行えるだけの専門家はほとんどいなかった」

 だが、じつは日本にはその専門家が存在していたのである。

 それは海上保安庁だ。