「ご主人に陽性反応が出ました。荷物を準備して下船してください。即入院です」
ダイヤモンド・プリンセス号の一室で、医師は淡々と告げた。夫婦の楽しみだったクルーズ旅行は悪夢の船旅に変わったのである。
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50代の妻が明かした夫の「感染」
3月1日、3711人の全乗員乗客の下船が完了したプリンセス号。「第2の震源地」と海外メディアで報じられた船内で、新型コロナウイルスの感染者は700人以上におよび、そのうち6人が亡くなった。
プリンセス号で夫が感染した、50代の妻が明かす。
「当初は2月12日発の便を予約していました。ベトナムに行ったことがなかったので、急遽、1月20日発の便に変更したのです。それが運の尽きでした」
製薬会社に勤務していた夫がリタイアした後、旅行が夫婦の楽しみだった。
初めてのクルーズ旅行もプリンセス号だった。
「今回で4回目の乗船。船内で開催されるダンスなどのイベントが充実しているんです。夫は70代で私と年齢差がありますが、積極的に毎回、参加してくれていました」(同前)
プリンセス号が横浜港に着いたのは2月3日のこと。その際、乗客に問診票が配られた。咳が出ていた妻は、該当の項目にチェックをして提出。夫には全く症状はなかった。
「嫁さんと間違えているんじゃない?」夫にまさかの陽性反応
停泊から2日後の朝5時半、検疫官2人が夫婦の客室に入ってきた。感染が疑われた妻が対象だったが、念のため、夫にも検査が行なわれたのである。
7日に出た検査結果は妻は陰性。しかし、夫が陽性だったのだ。
「夫は『嫁さんと間違えているんじゃない?』とケロッとしていました。本当に普段通りだったのです。リュックひとつだけ背負って下船し、そのまま都内の病院に入院しました」
夫は、入院当初、ヨガマットを借りてストレッチをしたり、妻に「病院食がおいしかった」とメールを送ってきたという。
ところが、2日後の9日、体調が急変する。