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千利休の茶室「待庵」を写した作品には、写真の“2つの力”がそなわっていた

アートな土曜日

2020/03/21

 千利休といえば、言わずと知れた茶の湯の大成者。そこまではよく知られているものの、彼がその美学を注ぎ込んだ茶室「待庵」を、内部までマジマジと見たことのある人は限られるはず。

 極小の茶室なれど、千利休が築いたもので唯一現存している待庵ともなれば、これは当然のごとく国宝指定されている。現存する京都・山崎へ赴けば外観こそ垣間見られるものの、通常は立ち入りなどできないのだ。

 だがしかし。ここに特命を帯びて、待庵内部を克明に撮影した人物がひとり。写真を用いて表現を続けてきたアーティスト、田村尚子である。

©️Naoko Tamura

待庵の修復過程を丹念に撮影してきた

 2年前の大阪府北部地震の影響で、待庵の土壁には一部亀裂が入ってしまった。それを機に土壁と柿葺屋根の修復が施されることになった。じつに23年ぶりに人の手が入ったのである。

 この修復の過程を、田村尚子は丹念に撮影していった。田村がその任に当たったのは、すでに確固たる実績があったから。かつて京都・大徳寺の塔頭寺院である真珠庵の書院および茶室、この柿葺屋根修復作業を撮影し、『柿』のタイトルで写真集にまとめているのだ。

 今回も同様のかたちでの依頼があり、撮られた写真は『土壁と柿』として一冊になって、昨年刊行された。ただし、本には収まらなかった写真もたくさんある。それらがこのたび、展示の機会を得た。大阪の和菓子店、餅匠しづく大阪新町店内にあるcoherent galleryでの、『土壁と柿』刊行記念「TAI-AN」田村尚子写真展だ。