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連載近田春夫の考えるヒット

KPOP感極まるJO1。まさか日本人グループとは思うまい――近田春夫の考えるヒット

2020/04/05

『無限大(INFINITY)』(JO1)/『Fireworks』(FlowBack)

絵=安斎肇

 いまどき「音楽を楽しむ」といったらば、どうだろう。移動中にイヤホンかヘッドホンで、というケースがおそらく大半なのではないか?

 そうしたライフスタイルがSONYの大発明“WALKMAN”から始まったのはいうまでもないことだが、残念ながら今となってはそれも遠い過去の思い出だ。Appleにお株を奪われて、もはや久しい……。

 まぁそんな愚痴はひとまず置くが、いずれにせよ、スピーカーを介して聴くのと、ダイレクトに耳に音が飛び込んでくるのとでは、音楽から受ける印象も結構違ったりする。

 私は、状況からみても今日の業界では、イヤホン/ヘッドホン再生を前提とした音作りが主流になっていると考えるのが自然だと思うものだ。

 ひとつは、音の左右への広がりや奥行き等々、音楽というよりは音響的効果の話である。音像の立体感を高める技術は、過去とは比べものにならぬほどの進化を見せている。勿論そのなかには、シンセサイザーの音作りも含まれる。

 シンセの存在意義といえば、現実の楽器では出すことの絶対無理な“実体のない音”を縦横無尽に創造できることに尽きる。そして、そういった音色とはまた“刺激的な音色”であったりする場合も多いのだが、その分野での競い合いといおうか、すなわち“サウンドそのもので聴き手を興奮させるノウハウ”に関して申せば、現状、我が国の音楽プロデューサーの殆どが、韓国トラックメーカー陣の後塵を拝しているという事実は認めざるを得まい(随分前に、いずれ韓国産の音源がアメリカのチャートでトップの座を勝ち取る日は近いと書いたが、そのときの根拠とは、音の持つ国際性だった)。

 他分野については専門外ゆえ語ることは避けたいが、ポップミュージックのフィールドに限っては、述べてきたような文脈に於いて、私と同じような見識を持つ、いい換えれば日本より韓国の方がカッコいい/新しいと思う若者が増えてきていることに、間違いはないと私は思っている。

無限大(INFINITY)/JO1(『PROTOSTAR』収録・LAPONE)吉本と韓国エンターテインメント企業の合同企画。本作がデビューシングル。

 今週のJO1にしても、情報を持たずに動画を観れば、まさかこれが日本人のグループだとは誰も思うまい。全員韓国から来た少年たちだと、そう思ってしまうだろう。

 それは見てくれもあるが、何よりはその歌唱法だ。担当の若者にいわせれば、地声から裏声への移行、あるいはラップ部分の語尾処理に顕著なのだそうだが、なるほどそういわれると、これはjpop歌唱の一般マナーとはまた違うものだと確かに思えるものがある。断然力強いのだ。

 なんでも、吉本興業関係と韓国のプロダクションの相乗りで企画されたTVのオーディション番組で勝ち残った子たちによって組まれたグループなのだそうだが、それにしても今回のバックのサウンド、日本製なのだとしたら今までで一番kpopに近い作りかも。あ、単に韓国産なのかな?

Fireworks/FlowBack(SONY)当欄ではこれまで韓流なりきり具合が話題になってきた同グループの8枚目シングル。

 FlowBack。

 この人たちならではの味は、ちょっと薄らいだ気がした。

今週の顔と顔「オレの“オリパラ音頭”。非公式なもんだから、ラジオでかけてもらえないんだよね。歌詞には“オリンピック”の文字は一切入ってないけど、文脈でそうと判るのはアウトなんだって。そんな音頭に、盆踊りにも最適な“正調”バージョンが登場したよ」と近田春夫氏。「YouTubeでタダで聞けるから、ひとり一再生よろしくお願いします!」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

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