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住まいと土地を考える
一部:住宅・住宅設備特集/二部:不動産・土地活用特集

人生100年時代といわれるいまこそ、健康寿命を延ばす快適で安全な住まいづくりが欠かせない。また親から相続した土地を有効活用したいという人もいるだろう。本特集では、専門家に話を伺いつつ、これからの「住宅・住宅設備」「不動産・土地活用」に効果的な商品やサービスを取り上げる。

どんな状況でも住まいは必要 まずはパートナー選びから始める
――不動産コンサルタント長嶋修氏に聞く

新型コロナウィルスの感染拡大で、日本経済や景気に大きな影響が出ている。不動産市場や不動産業界、住宅業界にはどのような影響があるだろうか。専門家に話を聞いた。

すべてはコロナ禍の収束にかかっている

 新型コロナウィルスの影響は、日本経済のみならず、不動産・住宅市場に負の影響をもたらしている。「新築マンションのモデルルーム来場者数は半減どころか8~9割減少し、閉鎖しているところも少なくありません。戸建てやアパートもとりあえず様子見とする向きが明らかに増加し、新規受注は減少傾向にあります」。こう話すのは不動産コンサルタントの長嶋修氏だ。

 こうした事態が転換するにはコロナ禍が一定の終焉をみせ、経済活動が再開し、かつ株価が一定の回復を見せることが欠かせない。その意味で、すべてはコロナ禍の収束にかかっているとみていいだろう。

居住用賃貸だけがクラッシュを免れている

不動産コンサルタント
さくら事務所 代表取締役会長
長嶋修氏
不動産コンサルタント
さくら事務所 代表取締役会長
長嶋修氏

 不動産活用や土地活用、賃貸住宅経営を考えている土地オーナーたちはこの先、どのような点に注意して検討すべきだろうか。長嶋氏は「日本の不動産市場は一気にしぼみ、REIT(不動産投資信託)は理論値が通用せず半値。国内外の観光需要を見込んだホテルは閑古鳥、民泊やマンスリーマンションなどもほぼ全滅です」と指摘する。

 さらに貸会議室はもちろん、飲食などのテナントを抱えるビルも足元おぼつかずといった状態。一方、オフィス系はリモートワーク(在宅勤務)の進展でこれまでのような床面積の需要は望めない。

「私の調べでは各所で賃料などの条件交渉が始まっているようで、賃料下落圧力は避けられません。こうした状況にあって、もっとも耐性のある居住用賃貸だけがクラッシュを免れています。理由は言うまでもなく、どんな状況であっても住まいは必要だからです」

在宅勤務の増加で書斎的空間の確保が必須に

 コロナ対策の一環として企業のリモートワーク化が急激に進展。Wi-Fiやケーブルなどのインターネット関連設備が必須になるのはもちろん、Zoomやスカイプといったツールを利用したWEB会議がマストになることから、居室内における書斎的なスペースの確保が必須になろう。あるいは共用スペース内におけるサテライトオフィスのようなもののニーズが出てくる可能性が高い。

 リモートワークの進展で必ずしも「都心」「駅前」「駅近」が重視されなくなるのではないかといった意見もある。長嶋氏は「そうしたニーズはおそらく限定的でしょう。むしろバーチャルのビジネス傾向が強まるほど、リアルで対面することに価値が置かれることになるでしょう」と話す。

 自動運転が普及すればますます自動車保有比率は下がり、通勤以外の買い物や病院・学校といった日常生活の利便性が重要になる。自治体も上下水道や道路といったインフラ維持効率を考えれば公共交通周辺に人を集めざるを得ない。もし賃貸住宅経営を検討するなら、やはり利便性の高い立地を重視したいところだ。所有している土地の利便性が低ければ思い切って売却し、駅近の不動産に組み替えるのも選択肢の一つだ。

 昨今では、生活動線が短く、家族同士のコミュニケーションが取りやすいと、平屋の注目度が高まっている。新築はもちろん、部屋数の多い住宅をライフスタイルに合わせた機能的な住宅に住み替える際の選択肢としても十分、検討に値するはずだ。

 また、健康に良い家づくりを考える上では、夏は涼しく冬は暖かい室内にするため、高断熱の窓にするのも有効だ。

不動産の価値は三極化していく

 
 

 「日本はこれから本格的な人口減少と少子化・高齢化時代が到来する。全体としては空き家率が増加し不動産価格や賃料は下げざるを得ません。しかしこの傾向は全国一律に起こるわけではなく三極化していくでしょう」と長嶋氏は指摘する。「(1)価値が落ちない、または落ちにくい不動産」「(2)ダラダラと下がる不動産」「(3)無価値になる不動産」といった具合だ。つまり「立地」と「企画」を間違えなければ、賃貸経営は引き続き安定した資産運用となる。また、医療施設や介護施設、保育施設など今後ますますニーズが高まる物件も選択肢になる。

 また不動産活用は、相続対策の一環として取り入れられるケースも多い。相続を考えるのであれば、なおさら事業の持続可能性を見極めて対応すべきだ。相続対策としての不動産活用をしないのであれば、寄付・遺贈という選択肢もある。まずは不動産会社や住宅メーカーなど信頼できるパートナー選びから始めてほしい。

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