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続出する“コロナ解雇” 「辞めろ」と言われたとき冷静に対処するための知識

退職届のサインを求められても安易に応じてはいけない

2020/04/10
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 新型コロナ特措法にもとづく緊急事態宣言が出され、雇用への不安がますます高まっている。「うちの会社もやばい」と、不安に思っている方も多いはずだ。

 もし会社から「辞めろ」と言われたら、どのように対処すればよいのだろうか。あまり考えたことがない人が多いと思う。実際、頭が真っ白になって、言われるがままに退職届を出し、何の保障もなしに仕事を失ってしまったという方は少なくない。

 しかし、転職先が見つからない状況で仕事を失うことは大きな経済的な損失になるし、ともすれば生活に困窮することにもなりかねない。このようなときには、自分の置かれた状況が法的観点からどのように捉えられるのかを把握し、適切な対処をする必要がある。

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 ここでは、私が代表を務めるNPO法人POSSEに実際に寄せられている相談の傾向も踏まえながら、「辞めろ」と言われたときに冷静に対処するための労働法の知識を紹介したい。

まずは「解雇」か「退職勧奨」かを確認

 4月に入ってから、解雇や退職勧奨に関する相談が増加している。多いのは、経営状況が悪くなった会社が人員整理を行うケースだが、なかにはコロナに便乗する形で労働者を辞めさせる会社もある。例えば、以前からパワハラを受けていた方が、コロナを理由に解雇されてしまったという事例もある。

 しかし、「辞めてほしい」と言われても、すぐに諦めるべきではない。まずは、会社が解雇をするつもりなのか、退職を促している(いわゆる「退職勧奨」)だけなのかを確認する必要がある。どちらとも取れる曖昧な言い方をされることが多いが、後述するように、解雇か退職勧奨かによって対処法は大きく異なる。できれば証拠を残すために録音をした上で、「私は辞める意思はありません。それでも辞めろというのですか?」とはっきり聞くべきだ。

「倒産しそうだから辞めてもらうしかない」などと言って、退職届にサインさせようとする会社もあるが、安易に応じてはいけない。法律上、解雇が認められにくいことを知っている経営者は、「解雇だと再就職で不利になる」などと理由をつけて退職に合意させようとする。退職届にサインした場合、お互いの合意にもとづいて労働契約を終了させたことになるため、法的に争うのが困難になる。納得がいかないのであれば、会社から言われるままにサインしないように注意する必要がある。即答は避け、「考えさせてください」などと、返事を保留する方が得策だ。