息子に罵倒されても覚醒剤をやめる気がない男の言い分
覚醒剤などの違法薬物に手を出した人は、出所後、どんな暮らしをしているのか。薬物依存を断ち切れた人がいる一方で、出所後も薬物を使い続けている人もいる。フリーライターの上原由佳子氏が、それぞれの立場の人に「なぜやめられたのか」「なぜやめられないのか」を聞いた――。
薬物は芸能界だけの話ではない
薬物をめぐるスキャンダルは定期的に報じられる。だが、薬物をやっているのは芸能人だけではない。筆者の住む沖縄県では、普通の主婦、性風俗店で働いている人、在留米軍の兵士など、「知り合いの知り合い」が薬物使用者というケースは珍しくしない。
本稿では、覚醒剤を使用している2人のケースを紹介したい。いずれも沖縄県に住む“覚醒剤の依存症から抜け出せた人”と、“いまだに抜け出せない人”の2人だ。
前者をAと呼ぼう。Aの親は公務員で、母親は専業主婦だった。家庭環境は恵まれていたが、Aは中学生からシンナーやライターのガスを吸っていた。
地元の先輩から「ちょっと舐めてみる?」と言われ…
Aによると、シンナーを吸う方法には瓶、ペットボトル、ティッシュなどがある。ガスはライターの詰め替え用のガスをそのまま吸うか、ビニールに移してから吸う。本人いわく「いろんな薬物に興味があったんだよね。ガスとシンナーは薬物じゃないけど。あと、せき止め薬のブロンも使っていた」という。ガスについては「シンナーより早く幻覚が見える。でも、人によって違うかもしれない」と説明する。
Aが覚醒剤をやるようになったのは、地元のヤンキーグループの先輩から「渡すものがあるから一緒に車で行こう」と誘われたからだった。何をくれるのかと聞いたら覚醒剤だという。先輩から「ちょっと舐めてみる?」と実物を渡され、舐めてみたけれど「苦いだけだった」。覚醒剤の量によっては、舐めるだけでも効き目はあるそうだ。そのため、本当に“ちょっと”だったのか不明であるし、もしかすると本人が覚醒剤に強い体質だったのかもしれない。